ドローンで医療格差を解消?「全遠隔医療」薬の配送をサポート!

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ANAと武田薬品のタッグ!長崎県五島市、往復4時間半の通院がドローンのサポートにより1時間で完結

離島や山間地などの医師が不足する地域で、ドローンでの薬配送や専用車両に備えつけのビデオ会議システムでの問診、服薬指導など、病院が企業などと組んで医療行為を全遠隔で提供する試みが増えています。
患者は家にいながら必要な時に診療を受けることができ、通院や薬局に行く手間や費用も削減できます。これにより広がる医療格差解消につながる可能性があります。

2021年3月、長崎県五島市にある久賀島で長崎大学やANAホールディングスや武田薬品工業などが実施したドローンによる薬配送の実証試験が行われました。
参加した中年の女性は、「これまで本島まで船に乗って薬を取りに行かなければならなかったのが、相当楽になる」と、処方された薬を受け取ってうれしそうにコメントします。

女性はほぼ寝たきりになる難病を患っており、月に1~2度の処方薬が必要です。人口300人程度の久賀島に医師は常駐していますが、難病の対応などは難しく、女性は16キロメートル離れた福江島まで船で往復最大4時間半かけて通院せざるを得ませんでした。

実験では、久賀島の患者に対し、福江島にいる医師や薬剤師がオンラインで問診と服薬指導を実施、調剤された薬をドローンで福江島から運んで久賀島にいる看護師が患者に薬を渡し、診療と薬の処方が完結するといった流れで実証実験が行われました。
ドローンはプロペラと固定翼を備えた高速移動が可能なタイプで久賀島と福江島を10分で結び、診察から薬の受け取りまでを1時間で完了でき、1日に3回程度運ぶ事が出来ました。

「速く飛べることは遠くまで飛べることにつながり、より多くの患者が活用できる」(ANAホールディングスドローンプロジェクトの信田光寿ディレクター)
実験に参加した長崎大学病院総合診療科の前田隆浩教授は、薬だけでなく血液や尿などの検体もすぐに運べるようになると期待しています。
従来のへき地医療では、検体を専門医のところまで運ぶのに時間がかかり、それをもとに診断したり、投薬量を調整したりするのが難しいとされていました。
しかし、ドローンで10分で運べれば、「必要なときに患者の状態に応じた最適な治療ができる」(前田教授)
オンライン診療では対面した時の微妙な空気感や顔色などが伝わりづらいが、医師が通常より慎重に診療をするなどの対策を講じれば「全遠隔医療は離島医療を都市のレベルにまで引き上げられる」と自信をのぞかせました。

五島市以外でもドローンによる医薬品の配送を拡充予定

無人物流サービスを手掛けるかもめや(高松市)も、長崎県五島市や香川県三豊市などでANAホールディングスなどと協力しつつ、薬配送を含むドローンによる物流の実証試験を実施しています。
21年に三豊市と粟島をドローンで結ぶ物流定期航路を開設し、22年からは医薬品の配送も開始する構想を立てています。
厚生労働省の調査によると、容易に医療機関を利用できない無医地区は19年度で590カ所で、14年度(前回)の調査から7%減りました。
しかし、無医地区に住む人口は12万6851人となり、14年度から2%増え、さらに地域別に見ると鹿児島県は無医地区数が14年度の2倍、岐阜県は6割増加するなど医師の偏在の問題は解消したとはいえません。

ドローン以外にも遠隔医療を受けられるサービス、ビデオ会議システムを搭載した車両を開発!

遠隔医療を提供する試みは、地方中心に全国で動き出しています。

ソフトバンクとトヨタ自動車が共同出資するモネ・テクノロジーズ(東京・千代田)は、長野県伊那市で地元の医療機関と組んで、19年12月からオンライン診療のビデオ会議システムを搭載した車両を活用し、遠隔医療サービスを提供しています。

通院が難しい患者のところへ車で向かい、車内で医師の診療をオンラインで受けてもらっています。

海外での先行事例:米スタートアップ企業「ジップライン」

東アフリカのルワンダでは、米スタートアップ企業「ジップライン」がドローンで輸血用の血液や医薬品を患者のもとに運ぶサービスを16年から展開しており、既に数万回の運航実績を挙げています。

「同国の交通インフラの悪さが事業を成り立たせている面はあるが、日本は遅れている」(前田教授)

ドローンの薬配送、今後の課題は環境整備

遠隔医療への期待は大きいが、普及に向けては環境整備が欠かせません。
ドローンによる薬配送については内閣官房と国土交通省が21年6月にガイドラインを出しました。
ドローン事業者に対し、薬の温度管理への対処や、ドローンが墜落するなどして薬を紛失した際、患者の個人情報が流出しないための対応マニュアルを作り、さらに事業計画を地元の医師会や薬剤師会に提出することを求めています。
ガイドラインの制定は企業側も歓迎で、ANAホールディングスの信田ディレクターは「事業化への道筋がついた」と話しています。 一方、劇薬指定されている薬品や、向精神薬、一部のがんの鎮痛薬などは運べないという制限などもあり、医療者や患者からのニーズを反映した工夫や制度作りなどを模索することが定着のカギになるとされています。

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