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DJIの農薬散布用ドローンが農業を変える。

世界のドローン機体市場の8割以上を占めるDJIが農薬散布ドローン「DJI AGRAS MG-1」の販売を開始しました。

民生用ドローンでドローン業界のシェアをがっちりと掴み、最近では満を持して産業用ドローンに本格的に力を入れだした同社なだけあって、その注目度は大変高くなっています。

DJI AGRAS MG-1の性能

DJI AGRAS MG-1は、3年に及ぶDJI史上最も販売までに時間を要した製品です。

既に韓国と中国では先行販売されている機体ですが、日本の厳しい基準に合う製品となると更なる改良が必要だったため、他国に比べて遅いタイミングでの販売となりました。

しかし、農業関係者からの事前のフィードバックは勿論、先に販売した韓国と中国からのフィードバックを受けることができたため、日本のDJI AGRAS MG-1は完成度が非常に高い農業用ドローンとして世に出てくることができました。

同機体はプロペラを8機搭載した所謂オクトコプターと言われる形状をしており、飛行時間は1バッテリー最大10分間。その10分間で1haの範囲に散布ができ、最大で10Lの液体を積んで飛行することが可能となっています。

また、農業で使用するということもあり、防塵性・防水性・耐食性に優れており、デリケートなドローンに業務を左右されることなく扱うことができます。

価格は180万円前後を予定しています。

機体の安定性

ドローンで最も大事になってくるのは、人間でいう脳にあたるフライトコントローラーの精度です。

特に、常にタンク内で揺れ動き、機体の重心を乱す液体を積んで飛行をするドローンとなれば、空撮や測量を用途とした機体に比べ、遥かに複雑なアルゴリズムが必要になります。

DJI AGRAS MG-1は「A3-AGフライトコントローラー」という専用のものを搭載し、液体が揺れ動いた場合でも安定した飛行が可能なようにアルゴリスムが最適化されています。また、気圧計とコンパスをそれぞれ2機ずつ装備し冗長性を持たせることで、1機のセンサーに不具合が発生しても、もう1機のセンサーでフライトの維持が可能です。

噴霧性能

農薬散布で使われるとなれば、気になるところはその噴霧性能。

従来行われていたラジコンヘリでの散布の場合、メインローターが起こす風はトルネードのようにねじれている上に、テールローターも薬剤を巻き込んでしまうため、均一に下方にピンポイントで散布することは難易度が高いものでした。

しかし、ドローンの場合は風が真下に向かうため効率的に散布することが可能です。それに加えDJI AGRAS MG-1はタンク前後の傾斜部と下部に3つのミリ波レーダーを配置しています。ミリ波レーダーによって、たとえ段々畑や柵田のような起伏のある地形でもそれを認識し、正確な機体の高度を取得することで作物から一定の距離を保ったムラのない散布が可能です。噴霧モードには、「前方噴霧」「後方噴霧」「全面噴霧」があり、圧力センサと流量センサにより、リアルタイムで噴霧速度を監視することもできます。

また、現段階では農林水産航空協会からの承認を取得できていないためロックがかかっていますが、承認されればファームウェアのアップデートにより『自律散布システム』という、効率的な飛行ルートを自動的に作成・編集、液体残量の自動計算が可能な機能が追加されます。

従来のラジコンヘリによる農薬散布

ラジコンヘリによる農薬散布には約30年の歴史があり、世界的に見ても先駆者は日本のヤマハです。

しかしその長い歴史も、ドローンの登場によって、終わりを迎えようとしています。

ラジコンヘリは熟練のパイロットでないと操縦が非常に困難なこともありますが、価格もDJI AGRAS MG-1が180万円だったのに対し、1000万円以上と高額になっています。

その分ガソリンエンジンで動くため、飛行距離やペイロード(積載可能な重量)の部分は現時点でドローンよりも優れていますが、日進月歩で機体の進化が進んでいるドローンが追いつく日も近いでしょう。

将来の農業

近い将来、専門業者に依頼するのではなく、農家自身がドローンを購入して農薬散布を行うケースが増加するでしょう。

DJI AGRAS MG-1の性能で180万円という価格は、従来のように年に数回、何十万という金額で専門業者に依頼する事を考えれば決して高くはないです。

自分で購入し、自分のベストなタイミングで散布でき、

数回散布すれば元が取れてしまうとなれば、個人で購入していく流れは自然です。

また、作物の生育調査にドローンを使おうとする動きも活発になってきています。ドローンで生育調査をしてクラウド上でデータ管理したり、タイミングを見てドローンで農薬散布をするといった、スマート農業の空から出来る作業の部分は全て一台のドローンで可能になっていくでしょう。

未来の農業では、自律制御で飛行するドローンが無人の田畑でこれらの作業を全て行うようになるかもしれません。

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