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ドローンで変わる、ドローンが変える、日本の米作り

産業用マルチロータードローン「YMR-08AP」に装着された粒剤散布装置から落下する黒い小さな粒。これはツヤの良さと白さで人気の静岡県産特A米「きぬむすめ」の種もみです。5月下旬、静岡県浜松市の加茂農園の水田で、ドローンによる種もみの散布が行われました。
水稲直播は、苗を植えるのではなく、直接種もみを水田に撒いて、田んぼの中で発芽を促す稲作の手法です。一般的な稲作と比べて労働負荷の軽減や作期の分散といったメリットがあり、農水省も働き手の減少や高齢化対策の一つとしてその拡大を推進しています。ちなみに種が黒いのは、種もみの安定した着床や鳥害から守ることを目的に、酸化鉄を原料とする黒鉄をコーティングしているからです。

「ドローンを使った水稲直播を導入しようと考えたのは、この田んぼの一部に田植え機が入れない深い部分があるからです」と、同農園の加茂文俊さん。「直播だけでなく、これから除草剤の散布などでもドローンを使うことになるので、それらを自分たち家族で完結していくために自動散布(オートパイロット)機能の付いたモデルを購入した」そうです。その言葉通り、この日は産業用マルチローターの技能認定証をもつ次女の裕津季さんが離着陸の操作を担当しました。

「YMR-08AP」に搭載されたオートパイロットは、あらかじめ設定したルートを忠実に飛行する自動の機能です。安全への配慮のため離着陸はマニュアル操作が必要ですが、スタートする位置からオートパイロットスイッチをONにすると、その後、オペレーターはモニターで監視するだけでムラのない高精度な散布が可能です。
水稲直播による稲作は、手間やコストのかかる育苗等のプロセスを省略できることから、従来の米づくりと比較しておよそ2割の経費と4割の労働力が削減できると期待されています。その一方でまだ課題もあり、出芽や苗立ちを安定させて品質の良い米をつくるためには、高い栽培技術や基肥・追肥に関する知識も必要とされています。

ヤマハ発動機株式会社では3年前からドローンを使った種もみ散布の実証実験を繰り返し、さまざまなデータを取得しながらその実用化を目指してきました。そうした積み重ねの中で、同農園のように機体を購入した生産者の皆さんによる水稲直播栽培が始まっています。
「機体の監視はタブレットで行います。農作業を手伝っても手が汚れることもないので、私たち若い世代にも親しみやすい」と裕津季さん。普段はJAに勤務しながら、休日には家業を手伝っているそうです。

ヤマハ産業用オートパイロットマルチローター
https://www.yamaha-motor.co.jp/ums/multi_ap/

農業の分野での活躍が著しいドローン。高齢化が進む中でドローンが人々の暮らしに寄り添って発展しているのがわかりますね。

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