DRONE PRESS|ドローンの最新ニュース・活用メディア

ドローン×千葉 ~国家戦略特区として一歩先の都市へ~

将来的に実証実験等ではなく、サービスとしてドローンが日本で最も早く飛び交う街は何処になるかと問われると、少しでもドローンに関わったことがある人やニュースに敏感な人であれば「千葉市」が頭に浮かんでくるのではないでしょうか。この記事では、現在千葉がどれくらいドローンに関して進んでいるのかを見ていきたいと思います。

国家戦略特区としての千葉市

先ずはアベノミクスの成長戦略の大きな柱である「国家戦略特区」とは何かというところから見ていきたいと思います。

「特区」というのは「特別区域」の略で、指定された地域で規制や税制を改革するなどし、その効果を調べる社会実験の場と位置づけられます。

勿論これまでも特区制度はありましたが、今回の「国家戦略特区」は経済効果への期待がこれまでよりも高いとされています。

これまでの特区制度も「国家戦略特区」も目的はどちらも規制緩和によるイノベーションの創出と国際競争力の向上です。

しかしこれまでの「特区」は特区に指定された自治体からの要望・提案を国が採用する「ボトムアップ型」でしたが、「国家戦略特区」は国が主導して戦略を定め、特区に指定された区域による「特区会議」を通して企業の誘致や国際的にも競争力のある街づくりを進めるという国主導の「トップダウン型」です。

そして指定される地域は、大都市圏が中心となるところもこれまでとの大きな違いです。強い分野を更に強くしていこうとする政府の意向があるため、従来の日本の特区よりも踏み込んだ規制改革が実現する可能性が大きい取り組みとなっています。

日本経済の停滞原因は、既得権益層が守ろうとする所謂「岩盤規制」にあるとされているため、安倍政権は「国家戦略特区」を突破口に規制改革による成長路線への回帰を狙っています。

千葉市はこの「国家戦略特区」の提案の一つとして『先端技術を活用したドローンによる宅配サービス・セキュリティ』を上げ、2019年までに千葉市でドローン宅配を実現すべく実証実験を重ねています。

実際に進めている実証実験の内容

今年4月にドローンによる「物資運搬」と「垂直飛行」の実証実験を行い成功させていましたが、11月22日に更に実践的な実験を成功させました。実験に参加した企業はドコモと楽天で、各々の強みを活かしたものになっています。

この実験でポイントになってくるのが「LTE回線を使った飛行」と「海上の飛行」の2点。

まず「LTE回線を使った飛行」とは、一般的なドローンは1キロメートル程度の範囲内しか操縦できない無線電波を使って飛行させますが、全国をカバーする携帯電話のLTEネットワークを使うことにより、従来の一般的なドローンでは届かなかった距離でも、カメラ映像や機体データのリアルタイム送受信が可能になります。これにより、長距離への目視外運航が可能になるので、将来的な「物資運搬」には不可欠な条件になります。

「海上の飛行」は、現段階では墜落した際に船員に危険が及ぶため、海の上を飛ぶ場合には飛行区域内への船舶の立ち入りを禁じる等の措置が必要な場合が多い。特に船舶が頻繁に行き交う海域では漁協等との調整が必要になり実証実験を行うだけでもかなりの労力が掛かります。今回の実験のために海上保安庁や所轄警察署・消防署、漁協など約20機関・団体との協議の末、海上飛行が実現しています。

実際の実験では、スマホで楽天のアプリ「そら楽」から商品を注文した後、東京・世田谷からLTE回線を通じてドローンを遠隔操作し、人工海浜「いなげの浜」の砂浜を離陸したドローンが海上を含む700メートルを自律飛行し、稲毛海浜公園プールまで書籍などの約400グラムの荷物を運びました

千葉市が構想する近い将来の街

千葉市は東京湾沿岸の物流施設から海上を通って千葉市幕張新都心のマンションへ荷物を届ける構想を描いています。

同市はこれまでの実験で、「物資運搬」「垂直飛行」「LTE回線を使った飛行」「海上の飛行」を成功させてきたため、今後ドローンの積載可能重量の増加や、全天候型の更なる安全性の向上ができれば技術的には近い将来に実現可能です。

最後に実際に千葉市が打ち出している構想を見てみましょう。

水平的取組
・幕張新都心に近接する東京湾臨海部の物流倉庫から、ドローンにより海上(約10km)や花見川(1級河川)の上空を飛行し新都心内の集積所まで運び、住宅地区内のマンション各戸への宅配を行う。
・ドローン開発の第一人者である千葉大学 野波健蔵特別教授と連携。(野波特別教授が代表取締役を務める㈱自律制御システム研究所は本市に立地)

垂直的取組
・幕張新都心若葉住宅地区内の店舗からも、ドローンにより超高層マンションの各戸へ薬品など生活必需品の宅配を行う。
・ドローンによる不審者・侵入者に対するセキュリティサービスを行う。
(若葉住宅地区については、ICT基盤の活用による他都市にない先進的なまちづくりの実現を目指しており、実証実験で得られた知見を設計段階から取り入れていく。)

処方医薬品や要指導医薬品のドローンによる宅配
・幕張新都心内において遠隔での診療及び服薬指導を行い、地区内の薬局からドローンによる医療用医薬品(処方箋を必要とする医薬品)や、要指導医薬品(薬剤師の指導が必要な医薬品)の配達を行う。

引用・転載元 千葉市HPhttps://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/sogoseisaku/makuhari/tokku_proposal.html

いかがでしょうか。将来的に目指す構想を見てみると、これまでの実験内容の意味が具体的に理解できるのではないでしょうか。

先ずは「国家戦略特区」として規制を緩和できなければ、技術的に可能になったとしても実現できません。

日本がドローンを活用したサービスで世界に勝つには、技術も勿論ですが規制や法律の緩和の方が鍵になるかもしれません。

Exit mobile version