世界各国の医療が変化|過疎地から都市部まで、多くの命をドローンが救う

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日本のみならず世界でも医療現場にドローンが活躍する場面が増えています。長年にわたり行われている臓器移植から昨今接種率などで問題となっているワクチン接種など、過疎地から都市部まで汎用性の高いドローンのおかげで、多くの命が救われようとしています。
今回は活躍の場を医療分野にまで広げている、国内外のドローンの事例を特集してお届けします。

患者にはアップルウォッチを提供、ビデオ通話で診察し薬の配送をドローンが担う【岩手県】

岩手県八幡平市で産官学が連携して過疎地の医療を支えるデジタルトランスフォーメーション(DX)の実証実験を進めています。
腕時計型端末を使った高齢者の見守りのほか、遠隔診療やドローンによる薬の配送、脳血管疾患などの発症リスク予測に今後取り組む予定で、医師不足に悩む地域の課題解決策を探ります。

実証実験は5年間の予定で、今夏に設立した産官学連携組織「八幡平市メディティックバレーコンソーシアム」が実施、同市とソフトウエア開発の「AP TECH」など市内のスタートアップ3社や、杏林大医学部の長島文夫教授ら計6者が参加しています。
実験ではAP TECHが開発したサービス「ハチ」が利用され、高齢者に腕時計型端末「アップルウオッチ」を装着してもらい血圧や心拍変動、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)などの生体データを収集します。医師はデータを見ながらタブレット端末などのビデオ通話で診察します。
初年度となる2021年度は、八幡平市立病院から約50キロメートル離れた山間部にある田山診療所の患者10人が対象になります。診療所は昨年夏から常勤医が不在となり、市立病院の望月泉統括院長ら医師3人が1時間から1時間半かけて通って診察を続けていますが、冬場は雪などで視界がきかず、診療所に行けなくなる日もあるため、今冬から同診療所と市立病院をネットで結んで遠隔診療を導入する予定です。
9月下旬にリハーサルを行い、ビデオ通話による診察の手順や通信回線の状況を確認しました。望月統括院長は「オンラインなら天候に左右されずに診察することができます。
画面越しになりますが、ハチで収集した患者の1日の生体データの変動などが参考になる」と期待が寄せられています。

【電波が届きにくい山間部にもドローンが薬をお届け】
実証実験は来年度に対象を3地区50人に増やし、23年度以降は市内全域の500人規模まで拡大する計画です。診察後に処方する薬の配送もドローンを活用する予定です。
AP TECHの大西一朗社長は「宅配業者の人手不足の影響で住民の少ない山間部に薬などの小口の荷物を送ることが難しくなっている」と指摘します。ただ、通常のドローンは携帯電話の電波が届きにくい山間部では制御するのが難しいとされています。そこで同社は「LPWA」と呼ばれる省電力・広域無線通信に着目、昨年秋に市内の山林でドローンの飛行実験を行い、携帯の電波が届かない場所でも制御できることを確認しました。

さらに人工知能(AI)による脳血管疾患や心虚血性疾患などの予測にも取り組みます。
まず脳卒中の死亡率が高い岩手県と、岩手より低い地方の計2500人を対象に脳卒中の危険因子である心房細動の有無や室内外の気温差など、予測に必要な生体・環境データを収集し、実際に発症した人と、しなかった人のデータをAIで解析。
例えば「半年後に30%の確率で脳梗塞を発症」などとリスクを数値化して注意を呼びかけ、予防や早期発見に役立ててもらいます。岩手県は、医師の充足度の目安となる厚生労働省の「医師偏在指標」が172.7と全国平均(239.8)を大幅に下回り、47都道府県で最下位。
大西社長は「岩手でまず都市部との医療格差を縮めるDXのモデルづくりを産官学で目指す。将来は医療以外にも応用し、地域活性化につなげたい」と話しています。

外出が難しい子供たちへドローン映像で外出気分を演出【新潟県】

新潟市中央区で、病気の子供たちにドローン映像を配信する取り組みが行われました。10月13日に行われたのは新潟県立がんセンターに入院している子どもたちなど、約10人に対し、ドローンで撮影した新潟市上空の映像を配信する取り組みです。
これは小児がん経験者の就労支援をする「ハートリンクワーキングプロジェクト」が、入院していて外に出ることが難しい子供たちに、外出した気分になってほしいという思いから始めました。

ドローンには、200倍までズームが可能なカメラを搭載、新潟市上空の映像を解説つきで届けました。
【ハートリンクワーキングプロジェクト 林三枝 事務局長】 「外出もなかなかできないところで、楽しいことがあまりない。そこで、こういう配信で喜んでもらえる。こちらも笑顔になってしまいます」
子供たちは約20分の空の旅を楽しみました。

輸送時間は6分間、輸送が難しい肺の運搬に成功【カナダ】

カナダで、ドローンを使った初の移植用の肺の輸送が成功したと報じられました。運搬および移植手術は成功し、移植を受けた患者は健康な肺を得て無事に回復、世界初となる臓器移植用の肺の輸送をドローンが行う様子は、以下のムービーから見ることができます。

Lungs for transplant delivered by drone for 1st time: health network – YouTube

今回、ドローンが運んだ肺の移植を受けたのは、2019年に肺線維症と診断された63歳のAlain Hodak氏です。Hodak氏は、かねてからドローンに興味を抱いていたエンジニアで、ドローンで肺を運ぶ今回のプロジェクトへの参加にも快く応じたとのことです。
プロジェクトを主導したカナダの医療機関・University Health Networkと、クイーンズランド州のバイオエンジニアリング企業であるUnither Bioelectroniqueは9月25日、トロント・ウェスタン病院からトロント総合病院までドローンを飛行させ、肺を運びました。距離は1.5kmで飛行時間は6分間。
トロント総合病院が選定されたのは1983年に世界初の肺移植を、1986年に世界初の両肺移植を成功させた病院だからとのことです。移植手術は無事に成功し、Hodak氏は順調に回復しています。
Hodak氏は、「元気になったら愛犬をたっぷりかわいがってあげようと思います」と笑いました。
Unither BioelectroniqueのMartine RothblattCEOがこの事業に着手したのは、娘が肺動脈性肺高血圧症と診断されたのがきっかけでした。
Rothblatt氏は、ドローンによる臓器移植の展望について、「今後10年以内に、ドローンで臓器を運ぶことが当たり前になる可能性が高いと思います」と話しました。
2019年には、アメリカの医療機関が世界初のドローンによる移植用臓器の運搬に成功しています。この時は腎臓が運ばれましたが、今回は輸送が特に難しいとされる肺の輸送に成功した初の事例となりました。伝えられるところによると、ドナーから摘出された肺のうち80%は、基準を満たさないため移植に使うことができないとのことです。

ドローンは、交通が発達していない国でのワクチン輸送の要となるか【インド】

インド政府は10月、ドローン(小型無人機)を使い、遠隔地に新型コロナウイルスのワクチンを配送する取り組みを始めました。
モディ政権は2021年末までに18歳以上の成人のすべてにワクチンを接種する目標を掲げています。インドは国土が広く、交通機関や道路が未整備の地域も多いため、ワクチンを早期に行き渡らせ、感染を抑え込み、経済回復に勢いをつけたいとしています。
インド北東部のマニプール州とナガランド州、ベンガル湾南部のアンダマン・ニコバル諸島でドローンによる配送が許可されました。管轄は同国政府が運営するインド医学研究評議会です。
すでにマニプール州のロクタックという湖の中にあるカラン島にドローンを飛ばしました。この島までの31kmを移動するには陸上とボートによる水上の移動で合計4時間かかるところ、ドローンを使えば15分にまで短縮できます。
マンダビヤ保健・家族福祉相は国産ドローンによるワクチン輸送は「(状況を劇的に変える)ゲームチェンジャー」になるかもしれないと指摘しました。
マンダビヤ氏によると、インド製のドローンが新型コロナワクチンの輸送に使われたのは南アジアでは初めてです。マンダビヤ氏は「この試みが新型コロナの免疫獲得を最高水準に引き上げてくれると強く信じている」と強調しました。

インドの人口は13億人を超え、このうち18歳以上の成人は約9億4千万人を上回ります。同国のワクチン接種の実績は11日現在で約9億5200万回にのぼり、すでに成人の72%が少なくとも1回の接種を終えましたが、十分な免疫を獲得したのは28%にすぎません。
保健・家族福祉省によると、1日あたりの接種回数は7月に434万回でしたが、9月には787万回に大きく増えました。
全成人への接種を年内に終えるという目標を達成するには、1日あたりの接種回数を少なくとも1000万回に引き上げる必要があります。
新型コロナ対策で政府のアドバイザーを務めるV・K・ポール氏は最近、ワクチン接種が「軌道に乗っている」と評しました。
ワクチン輸送を担うことで、インドでは、ドローンの働きがコロナウィルス拡大の歯止めの1つになっているようですね。

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