
- インド防衛企業 Zen Technologies が「北部技術シンポジウム 2026」にて国産完全統合型 AI 対ドローンシステムを初公開
- 70 MHz〜12 GHz の広帯域制圧、15 km 超の探知、最大 100 機同時スウォーム追跡に対応
- 車載・携帯・固定の 3 形態で前線から重要インフラまで幅広い防護を実現
- アジア市場の対ドローン競争が激化——日本の防衛・インフラ調達にも影響は必至
目次
インドの防衛自立戦略を映す国産対ドローンシステム
Zen Technologies は 2026 年 5 月 8 日、プラヤーグラージで開催された「北部技術シンポジウム 2026」において、インド初のモジュール式 AI 統合型対ドローンシステムを公開した。同社はこの発表を、インド政府の防衛自立(Atmanirbhar Bharat)戦略に沿う国産技術の成果として位置づけている。
背景には、低コスト FPV ドローンや協調スウォーム攻撃が現代戦の様相を変えつつあるという現実がある。ウクライナ紛争で実証された「安価な無人機が高額な防衛アセットを無効化する」構図は、インド・パキスタン国境から中東・アジア太平洋まで急速に拡散している。Zen はこのシステムを、その脅威に対する「インド発の答え」として打ち出した。
技術仕様:検知から無力化まで一気通貫
同社が発表した仕様の核心は「フルスペクトル周波数制圧」にある。70 MHz から 12 GHz まで対応することで、市販 Wi-Fi・Bluetooth・920 MHz 帯から軍用 LTE・衛星通信まで、事実上あらゆる通信方式のドローンを捕捉できる。
探知・追跡面では、高感度の国産レーダーにより 15 km 超の探知・追跡に対応し、最大 100 機の同時スウォーム対処を実現する。中核にある「データフュージョン・指揮センター(DFCC)」は複数センサーの情報を AI アルゴリズムでリアルタイムに統合し、分類・優先度付け・対処判断を自動化する。
無力化のレイヤーは多段構成だ。RF ジャミングと GNSS ジャミング/スプーフィングで通信を遮断しつつ、12.7 mm・7.62 mm 口径の遠隔制御火器(RCWS)、防空砲、カミカゼ型迎撃機との統合も可能とする。これにより、小型民生機から大型軍用機まで、脅威レベルに応じた比例応答が選択できる。
3つの展開形態:用途別モジュール比較
車載型
- 車両搭載・高機動
- 前線部隊・輸送車列護衛
- 機動地域防衛に対応
携帯型(マンポータブル)
- 歩兵が個別携行可能
- 軽量設計
- 分散最前線での対処
固定設置型
- 空港・軍事基地・発電所・港湾
- 重要インフラへの恒久設置
- 24時間継続防護
出典:Zen Technologies 北部技術シンポジウム2026 発表資料より作成
各形態はすべて迅速展開と堅牢性を優先した設計で、ユーザーの要件に応じてスケーラブルにカスタマイズできるという。Zen Technologies はすでに世界 10,000 システム超を出荷し、200 件以上の特許申請を保有。インド科学技術省から研究開発機関として認定を受けており、開発・量産の両面で実績を積んでいる。
日本市場への示唆:欧米一辺倒だった対ドローン調達が変わるか
この発表が日本の防衛・セキュリティ関係者にとって無関係でないのは、いくつかの理由による。
第一に、アジア発の高性能対ドローン製品が価格競争力を持ち始めた点だ。現状、日本の公共機関やインフラ企業が導入する対ドローンシステムは欧米製が主流だが、インドが実戦経験を背景に大量生産体制を整えれば、調達選択肢そのものが広がる。価格・性能・供給安定性の観点で評価が変わり得る。
第二に、日印防衛協力の文脈がある。2022 年以降、日本とインドは防衛装備品の共同研究・輸出について閣僚級での協議を重ねており、対ドローン分野はその有力候補として挙がっている。今回のシステムはその議論に具体性を加える存在になる可能性がある。
第三に、重要インフラ保護の急務だ。日本の防衛省は 2024 年にドローン対策ロードマップを策定し、空港・原発・港湾周辺での対処能力整備を急いでいる。固定設置型の対ドローンシステムは、まさにその需要に直結する。
DRONE PRESS 読者——自治体・インフラ管理者・防衛関連企業——にとって、アジアの対ドローン技術競争は決して遠い話ではない。Zen Technologies の動向は、この市場がグローバルに多極化する転換点を示している。
主要スペック数値
まとめ
Zen Technologies の今回の発表は、インドが防衛技術の輸出国へと転換しつつある象徴的な出来事だ。対ドローン市場はいまや安全保障・インフラ・公共安全の交差点に位置し、日本でも官民双方の関心が急速に高まっている。今後の調達動向・日印協力の進展を引き続きウォッチしたい。
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本記事は、Google News インド(2026-05-08付)の報道をもとに、DRONE PRESS編集部が独自の分析を加えてお届けしました。











