【米国】DJI・AutelのFCC規制見直しが節目、Covered List問題は日本の調達にも波及するか

【米国】DJI・AutelのFCC規制見直しが節目、Covered List問題は日本の調達にも波及するか

米連邦通信委員会(FCC)によるDJI・Autelなど外国製ドローンの「Covered List」追加をめぐり、両社の異議申立てに対する意見募集が重要な節目を迎えた。米国市場の問題に見えるが、公共安全、農業、点検分野でDJI・Autel機を使う事業者にとっては、機体調達と運用継続のリスクをどう読むかという実務課題に直結する。

対象DJI / AutelET Docket 26-22 / 26-23
FCC通知DA 26-2232026年3月6日公表
返信期限2026年5月11日反対意見への返信期限
争点Covered List新規認証・調達への影響

DJIとAutelの申立ては何を争っているのか

FCCは2025年12月22日、2025年度国防権限法(NDAA)第1709条に関連し、外国製の無人航空機システム(UAS)および重要部品をCovered Listへ追加した。Covered Listは、米国の国家安全保障上のリスクがあると判断された通信・監視関連機器等を扱うリストで、対象機器はFCCの機器認証や将来の市場投入に大きな制約を受ける。

DJIは2026年1月に再考を求める申立てを行い、Autelも同日にApplication for Reviewを提出した。FCCはこれらをDJI側のET Docket 26-22、Autel側のET Docket 26-23として扱い、2026年3月6日のPublic Notice(DA 26-223)で意見提出の手続きを示した。反対意見への返信期限が2026年5月11日に設定されており、今回のニュースはこの手続き上の締切をめぐるものだ。

既存機体が即座に飛べなくなる話ではない

重要なのは、Covered List入りがただちに既存ユーザーの飛行を禁止するものではない点だ。問題の中心は、新機種のFCC認証、将来の販売、公共調達、保守やアップデートの継続性にある。すでに運用中の機体が即日使用不能になるという単純な話ではないが、米国の事業者にとっては「次の更新機を調達できるか」「保険や発注者が同等の代替機を認めるか」が現実的なリスクになる。

公共安全機関、農業事業者、インフラ点検会社は、価格、性能、ペイロード、カメラ、マルチスペクトル対応、保守体制まで含めて機体を選んでいる。DroneXLは、Mavic 3 EnterpriseやMavic 3 Multispectralのような機体に代替しづらい現場がある点を挙げ、一般論ではなく具体的な業務影響をFCC記録に残すことが重要だと指摘している。

反対側は安全保障リスクを強調

一方で、米国防総省や安全保障系シンクタンクは、DJIなど中国系メーカーの機器が国家安全保障上のリスクになり得るとして、Covered Listからの除外に反対する立場を取っている。争点は単に「中国製かどうか」ではなく、通信、データ、ソフトウェア更新、サプライチェーン、政府・重要インフラでの使用可否をどう評価するかに移っている。

DJI側は、FCCの判断により2026年に予定していた複数の製品投入や米国売上に大きな影響が出ると主張している。DroneXLはDJIの裁判所提出資料として、25件の2026年製品投入と約15.6億ドルの米国売上への影響を紹介している。ただし、この金額はDJI側の主張であり、FCCが認定した損害額ではない。

市場インパクトは「禁止」よりも調達不確実性にある

米国の商用ドローン市場では、DJI機が価格性能比、カメラ性能、ソフトウェア、保守網で大きな存在感を持ってきた。規制の影響が新規認証や将来モデルに集中する場合でも、販売店、保険会社、公共機関、点検会社は数年先の機材更新計画を見直さざるを得ない。つまり短期の飛行可否よりも、中期の調達不確実性が問題になる。

日本の事業者に置き換えると、これは「いま飛ばせるか」だけでなく、「来年も同じ価格帯・同じ性能帯で機体を更新できるか」という問いになる。特に複数年契約の点検案件や自治体案件では、機体の継続供給と代替手段を説明できることが、営業上の信頼にも関わる。

時系列で見るFCC手続き

  • 2025年12月22日:FCCが外国製UASおよび重要部品をCovered Listに追加
  • 2026年1月:DJIが再考申立て、AutelがApplication for Reviewを提出
  • 2026年3月6日:FCCがDA 26-223で手続きと期限を公表
  • 2026年4月6日:反対意見の期限
  • 2026年5月11日:反対意見への返信期限

日本の事業者にとっての示唆

日本では米国のCovered Listがそのまま法的効果を持つわけではない。それでも、米国市場でDJI・Autelの新規認証や販売が制限される流れは、日本の調達判断にも影響する可能性がある。自治体、インフラ事業者、警備・防災用途では、米国の安全保障政策を参考にして調達基準を見直す動きが出ても不自然ではない。

特に、農業、測量、点検、映像制作のようにDJI機への依存度が高い分野では、短期的には既存機体の保守・バッテリー・修理・ファームウェアの継続性、中期的には代替機候補の価格と性能差を確認しておく必要がある。米国の規制は日本の現場を直接止めるものではないが、部品供給、保険、発注者の調達基準に波及すれば、実務上の影響は無視できない。

入札・公共調達で「メーカー国籍・セキュリティ要件」が問われる実例

「発注者の調達基準」は抽象的な話ではない。日本でもすでに具体的な動きが出ている。政府は2020年9月に「政府機関等における無人航空機の調達等に関する方針」(内閣官房関係省庁申合せ)を策定。防衛・重要インフラ点検・警察用途など機密性の高い業務に用いるドローンは「サプライチェーンリスクの少ない製品を採用」し、内閣官房と事前協議することを義務付けた。防衛省は調達先との契約に「装備品等及び役務の調達における情報セキュリティの確保に関する特約条項」(防衛省、令和5年版)を付加しており、サプライチェーン全体の情報管理適合が参加条件に組み込まれている。さらに内閣官房が経済安全保障推進法の審議資料として公表した文書には「無人航空機は中国が国際市場の8割程度を占める」と明記されており、供給途絶リスクと国産化の必要性が政策課題として位置付けられている。

民間発注でも、外資系企業や米国の政府調達が絡む案件では「NDAA(国防権限法)準拠かどうか」が事実上の参加条件になる。日本のACSLはこの流れを機会と捉え、2023年1月に米国子会社を設立。NDAA準拠機を強みに同年12月にGeneral Pacificへ50機を販売した(日経クロステック)。「日本の事業者は関係ない」ではなく、どの発注者・どの案件かによって調達条件は既に分かれている。

導入・調達担当者が確認すべき項目

  • 既存機体の保守期限、修理受付、バッテリー供給の見通し
  • 発注者や自治体案件で、メーカー国籍やセキュリティ要件が指定されていないか
  • 代替機の価格、性能、カメラ、ペイロード、飛行時間、操縦者教育コスト
  • ファームウェア更新やクラウド連携の利用条件
  • 公共安全・重要インフラ案件での説明資料やリスク管理方針

FAQ

米国でDJIやAutelの既存ドローンは飛ばせなくなるのか?

今回の主な争点は新規認証や将来の販売・調達であり、既存機体の飛行を即時に禁止する話ではない。ただし、公共調達や保守継続には影響が出る可能性がある。

日本のドローン事業者にも関係があるのか?

米国規制が日本で直接適用されるわけではない。ただし、日本でも2020年9月の内閣官房申合せ以降、防衛・インフラ点検・警察案件の入札でセキュリティ要件が参加条件として組み込まれており、防衛省の調達契約には情報セキュリティ特約条項(防衛省)が明記されている。また、米国向け事業や外資系発注者が絡む案件では「NDAA準拠か」が参加要件になるケースも出ており、調達基準・保険・部品供給の複合的な観点で、公共・インフラ案件を扱う事業者は動向を注視すべきだ。

代替機にすぐ切り替えるべきか?

急いで切り替えるより、既存機の保守計画と代替候補の性能差を整理する方が現実的だ。農業や点検では、価格だけでなくセンサー、運用ソフト、操縦者教育、修理体制まで含めて比較する必要がある。

今回のFCC手続きで何が決まるのか?

DJIとAutelの申立てに対し、FCCがCovered List追加の再考や見直しを行うかが焦点になる。2026年5月11日の期限は、最終判断そのものではなく、FCC記録に意見を残す重要な手続き上の節目だ。

出典:DroneXL、FCC Public Notice DA 26-223、FCC Public Notice DA 25-1086

関連ニュース

本記事は、DroneXL(2026-05-07付)、FCC Public Notice DA 26-223(2026-03-06付)、FCC Public Notice DA 25-1086(2025-12-22付)の報道をもとに、DRONE PRESS編集部が独自の分析を加えてお届けしました。

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