【英国】HeliguyがCAAからBVLOS認可——DJI Dock 3で鉄道を遠隔監視、Network Rail2拠点に配備へ

【英国】HeliguyがCAAからBVLOS認可——DJI Dock 3で鉄道を遠隔監視、Network Rail2拠点に配備へ

英ドローンソリューション企業Heliguyが英国民間航空局(CAA)からBVLOS(目視外飛行)認可を取得し、鉄道大手Network Rail向けに遠隔ドローン運用を行えるようになった。認可に基づき、自動運用に対応するDJI Dock 3がグロスターとロムフォードの2拠点に配備される。初期展開は試験運用と位置づけられ、将来の全国展開に向けた青写真とされる。現場にパイロットを常駐させず、数百マイル離れた拠点から線路上のドローンを制御する構成だ。

プロジェクト概要

運営企業Heliguy(英国)× Network Rail
認可機関英国民間航空局(CAA)
運用拠点グロスター・ロムフォード(2拠点)
制御拠点ニューカッスル 遠隔運用コマンドセンター
使用機材DJI Dock 3 + DJI Matrice 4TD
飛行スケジュール月〜金(平日定期)
認可フレームワークSORA SAIL II
認可取得期間約16ヵ月
表:本プロジェクトの基本情報(出典:DroneDJ「Automated DJI drones are now watching UK railways remotely」2026年6月11日)

ニューカッスルから遠隔制御するDJI Dock 3の無人点検

このプロジェクトは2026年6月に報じられた。最大の特徴は、制御拠点と現場が数百マイル離れている点にある。Heliguyのニューカッスルにある遠隔運用コマンドセンターから、グロスターとロムフォードの線路上に置いたDJI Dock 3を起点に発進するMatrice 4TDを、パイロットが遠隔で制御する。現場に人はいない。

使用機材のDJI Matrice 4TDは、高解像度ビジュアルカメラとサーマル(熱)センサーを一体搭載した点検特化型の機体だ。昼夜を問わず線路周辺の異常を検知でき、平日(月〜金)の定期スケジュールで自動飛行・データ収集・帰還充電を繰り返す計画だ。DJI Dock 3はドローンの発着・充電・格納を自動で行うステーションで、パイロットが現地に赴かなくても長期運用を維持できる。

約16ヵ月かかった認可プロセスとSORA SAIL II

BVLOS認可の取得には、機体や運用の技術面に加えて、規制当局との協働が要る。HeliguyはCAAとの協力・試験に約16ヵ月を費やした。認可はSORA(Specific Operations Risk Assessment)フレームワークのSAIL IIレベルで付与されており、人口密集地を含む複雑な鉄道環境での安全性証明が求められた。

SAIL IIは、EASAおよび英国CAAが採用するSORAのリスク区分で、I〜VIの6段階のうち2番目に位置する。このレベルでは、飛行中の機体失制御・通信断絶・第三者への危害リスクを定量的に評価した「安全ケース」の作成と審査が義務づけられる。Heliguyはこの16ヵ月で、飛行試験、データ収集、文書化、規制当局との対話を積み重ね、最終的に認可を取得した。

この期間はコストでもある。認可を得た事業者は参入障壁を確保でき、Network Railという公共インフラの大口顧客と複数年の運用実績を積めば、次の認可取得や拠点拡大の見通しが立ちやすくなる。今回Heliguyが得たのは認可と、規模拡大に向けた運用実績を積む足場だ。

鉄道運営者にとっての価値

Network Railウェスタンルート運用ディレクターのSimon Gillibrand氏は「現場のチームがより速く情報にアクセスし、的確な判断を下して列車を安全に走らせられるようにするための取り組みだ。混雑する運用中の鉄道でインフラを遠隔評価できれば、作業計画の効率化や問題発生時の迅速な対応につながり、最終的に旅客・貨物利用者への遅延を最小限に抑えられる」とコメントした。アングリアルートのRoute Crime & Security Manager、Richard Barke氏は「現場の状況をリアルタイムで把握できれば、インシデントへのより速く的確な対応を支えられる。これはまだ発展途上の能力だが、サービスの回復力や復旧を高める可能性は明確だ」と述べている。

Network Railが抱える日常的な課題は設備点検にとどまらない。線路への不法侵入、鉄道施設への破壊行為、緊急時の現状把握は、いずれも安全運行と定時運行の両面に直結する。常時飛行できる無人航空資産があれば、問題発生から映像確認・対処判断までのリードタイムが短縮される。

繰り返し飛行することで、正常状態のベースライン映像も蓄積される。機械学習を組み合わせれば、設備の経年変化を定量的に追跡し、重大故障の予兆を早期検知するシステムへ発展させる余地がある(ここはDRONE PRESS編集部の見立て)。今回の運用は、その手前の段階にあたる。

BVLOSが運用コストを左右する仕組み

現在のドローン産業では、多くの商業運用でパイロットや目視監視者が機体の近くに留まることが法的に義務づけられている。これが規模拡大の壁になる。1人のパイロットが担当できる現場は1ヵ所に限られ、遠隔地・危険環境・夜間の継続運用は現実的でなくなる。

BVLOSはこの制約を取り除く。1人のオペレーターが複数の遠隔拠点を管理し、飛行ルーティンを自動化すれば、運用コストの構造が変わる。鉄道・送電網・パイプライン・海岸線監視のように、長距離かつ定期的な点検需要が高い産業では、BVLOSの可否が運用効率を左右する。

日本の事業者・自治体への示唆

日本でもの改正航空法施行でレベル4(有人地帯における目視外飛行)が解禁され、BVLOS運用の法的根拠が整った。ただし、現実の普及はまだ始まったばかりだ。

英国の事例から日本が読み取れる点は、認可取得に約16ヵ月かかったという事実にある。審査が遅いのではなく、規制当局との信頼構築・安全証明・実績積み上げに相応の時間が必要だということだ。原文はこの点を踏まえ、準備を始めた事業者が2〜3年後の市場ポジションにつながると指摘している。

国内で同様のBVLOS鉄道監視を検討する事業者は、まず法的要件を押さえる必要がある。レベル4運用には第一種機体認証と一等無人航空機操縦士の技能証明、航空局への飛行計画申請が前提になる。そのうえで、DJI Dock 3のような自動発着・充電に対応するDock型システムの選定、遠隔制御用の冗長な通信回線、飛行エリアの地上・空域リスク評価をまとめた安全ケースの文書化が要る。英国の16ヵ月が示すように、航空局との事前相談を計画初期に組み込み、小規模・有人監視付きの運用から段階的に範囲を広げるのが現実的だ。

JR各社や私鉄が管理する国内の鉄道網は全国に広がり、送電線・水道管・高速道路を含めれば、定期空撮点検の潜在的な対象は広い。インフラ保有者・ドローンオペレーター・規制当局が協働してBVLOSの社会実装を進めるうえで、英国の今回の運用は実現可能性を示した先行事例といえる。

出典DroneDJ「Automated DJI drones are now watching UK railways remotely」(2026年6月11日)Rail Industry Connect「Network Rail secures approval for remotely operated drones in railway first」Unmanned Airspace(2026年5月28日)

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