センシンロボティクスとフジタが国内初の「全自動ドローン」で建設現場内の測量と安全巡視の無人化に成功

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ドローン建設

ロボティクス×AIで社会課題の解決を目指す株式会社センシンロボティクスと、国内外で多くの建設物を手掛ける総合建設業の株式会社フジタは共同で、2021年7月14日(水)、現場オペレーターの介在なしに現場内の安全巡視や測量業務を行う、建設現場向け全自動ドローンシステムを開発し、建設現場において国内初(フジタ調べ/2021年7月12日発表時点、日本国内の建設現場において)となる、無人地帯(現場内はドローン飛行を認知している者のみ)での補助者なしで飛行できるレベル(=空の産業革命「レベル3」)での飛行を可能としたと発表しました。

安全巡視や測量業務を全自動ドローンで無人化

今回センシンロボティクスとフジタが開発した技術は、センシンロボティクスが提供する、“自動離着陸”・“自動充電”・“開閉式ハッチ”などを備えた完全自動運用型ドローンシステム「SENSYN Drone Hub」と、フジタの建設現場での安全巡視ノウハウ、簡易ドローン測量「デイリードローン®」、測量用の目印である「標定点」を設置せずに高精度な出来形計測が可能な「斜め往復撮影ドローン」の技術を組み合わせたシステムです。

指定時刻に基地からドローンが自動的に離陸し、事前に指定したルートを通り、測量と安全巡視を実施後、自動で着陸し充電を実行する機能を、建設現場での実用に問題のないレベルまで向上させました。

<SENSYN Drone Hub>
ドローン機体、自動離発着や自動充電に対応する基地、加えて制御ソフトウェア・業務アプリケーションが一体となった、業務の自動化を推進するシステムです。事前に設定されたルートへの自動飛行や、画像・映像の撮影が可能なため、大規模な工場の警備監視や設備点検などの領域において、作業員が都度現地に赴く必要がなくなり、効率的かつ安全な業務遂行が可能となります。

<デイリードローン®>
フジタの開発した、切盛土工事の日々の出来高管理にドローンによる測量を活用する技術。土量計算など日常の出来高管理において、現場で気軽かつ迅速に利用することに主眼をおいて、日々の土工事作業終了後にドローンを飛行させ、撮影写真データの点群処理から土量算出までを当日中に完了させる測量技術として開発されています。評定点設置作業の省力化と点群データ解析作業の時間短縮を図る簡易測量でありながら、出来形精度±50mmの確保と算出土量の誤差±5%以内を達成しています。また、高精度の測量が必要な際には、写真撮影時の設定条件を変更することで従来と同様に国土交通省が推進する「i-Construction」での要求精度を確保することも可能です。

<斜め往復撮影ドローン>
フジタが山口大学と共同で開発した、造成地を対象とした独自のドローン測量手法です。
カメラ角度を斜めにして撮影することで、標定点と呼ばれる測量用の目印を設置せず、特に精度を出しにくい、高さ方向の測量精度を画期的に向上させるものです。施工中の複数の造成現場(千葉県野田市、茨城県つくばみらい市など)において実証試験を行った結果、高さ精度(誤差)23㎜という国土交通省が推進する「i-Construction」の要求精度を満たす高精度を達成し、有用性を確認しました。標定点を完全になくすことで測量にかかる時間を大幅に削減し、作業時間を最大4分の1に短縮できることから、省力化と生産性の向上につながる技術です。

データ管理や遠隔監視など必要なアプリケーションを短期間で開発

今回のシステム開発に用いられているのが、センシンロボティクスが提供するデータ分析・ロボット制御を行う業務自動化統合プラットフォーム「SENSYN CORE」です。ロボットの自動制御、データ分析・解析、外部システムとの連携などの機能を有するコンポーネントの組み合わせで、対象業務に特化したアプリケーション開発を短期間で行うことが可能なものです。

今回は以下2つのコンポーネントをしようしています。

<SENSYN CORE Datastore>
ドローンやロボット等の取得したデータをクラウド上で一元管理を行う機能。位置情報と紐付けて地図上から確認、不具合箇所のマーキングやコメント記入、画像の比較表示など、成果物の目視点検を効率的に行える機能を多数有しています。

<SENSYN CORE Monitor>
ドローンや様々なデバイスに対応した遠隔監視を可能にします。リアルタイムの映像とともに、地図上の自機位置や飛行予定ルート、電波状況やバッテリー残量などの状態監視を、遠隔・複数の拠点で行うことができます。地上のネットワークカメラ等と組み合わせることで、補助者なしの目視外飛行にも対応しています。

建設現場における全自動ドローンシステムの特徴および導入効果

ドローン建設

両社は今回の建設現場における全自動ドローンシステムの特徴および導入効果について、それぞれ以下の通りまとめています。

<特徴>
・自動写真測量:「デイリードローン®」、「斜め往復撮影ドローン」の技術を導入。
・自動安全巡視:「SENSYN CORE Monitor」を活用し、現場事務所や遠隔拠点から現場内の様子を遠隔監視し、リアルタイムに把握可能。撮影後の画像確認時には、「SENSYN CORE Datastore」を活用しデータを格納。AIを活用した対象物の自動抽出機能により撮影日の異なる同じ場所の画像を比較することで、現場の変化を把握しやすくするメニューも搭載し、安全巡視業務の高度化を実現。

<導入効果>
・ドローン飛行の操縦者と補助者(2名)が不要で100%の省人化
・現場の出来高測量と安全巡視業務の時短で効率が50%アップ
・独自ドローン技術を導入した自動写真測量で出来高測量業務の時間を従来の1/4に短縮
・日々の出来高を土量推移で把握でき工事原価を適正管理
・空撮により日々の施工進捗が可視化されるため、施工計画の変更などにも即時対応可能

実際の建設現場での人件費カットに成功

今回のシステム開発にあたって、フジタが施工中の「令和元-4年度横断道羽ノ浦トンネル工事」(徳島県小松島市/発注者:国土交通省四国地方整備局)で、全自動ドローンにより、1日当たり、安全巡視2回、写真測量1回の作業を1カ月間行った結果、出来高管理(測量から土量算出)に必要な業務時間を従来の1/4に短縮するとともに、従来は必要だったドローンの操作、補助に携わる人員2名が不要となり、省人化できたことも確認されています。

ドローンの完全自動運用に向けた効果測定・実証実験を継続

数年に渡る長期工事が一般的な大規模土木建設においては、現場の安全管理ときめ細やかな進捗管理が求められます。特に工事の進捗管理に必要な測量業務において、ドローンによる航空写真測量は、従来の地上光波測量と比較してコスト削減、工程短縮できるという調査結果もあり(センシンロボティクス調べ)、その効率性から既に土木建設現場での活用が進んでいます。

現在、ドローンの目視外補助者なし飛行は許可申請が必要ですが、センシンロボティクスとフジタは将来的に目視外飛行や無人飛行に関する各種規制要件が緩和されることを想定し、2019年3月より全自動ドローンシステム開発に着手しています。複数の建設現場での安全巡視や警備監視、土木測量に関する機能検証試験を実施、実証実験の結果を受けた改良を繰り返し、建設現場での運用に対応できるよう機能向上に取り組んでいます。

今後も将来的な完全自動運用に向けて、効果測定・実証実験を継続し、業務の効率化・高度化を進め、社会課題でもある人手不足の解消や作業者の安全確保に貢献できるソリューションを開発していくとしています。

参考:過去の実証試験
〇2019年2月28~3月8日:福井県敦賀市地内(敦賀車両基地建設現場)での実験
目的:
-「SENSYN Drone Hub」における飛行精度の確認
-「SENSYN Drone Hub」のハッチ開閉機能、離着陸精度、充電機能の確認
-リアルタイム映像伝送の通信状況及び映像品質の確認
〇2019年12月16~12月20日:福井県敦賀市地内(敦賀車両基地建設現場)での実験
目的:安全巡視・土木測量の分野において、「SENSYN Drone Hub」が建設現場でのドローン自動運用に必要な要件を満たせるかの機能検証。

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