ドローン業界の雄『DJI』は何故業界を独走できているのか。

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Phantom

ドローンに少しでも興味を持った人であれば必ずと言っていいほど知っている会社『DJI』。ドローン業界でDJIを知らないというのは、例えるならばスマートフォンやPCを使っていてAppleを知らないようなものです。実際に「ドローン界のApple」と言われるまでになっているDJIですが、ドローンに興味を持っているか経済に敏感な層でない限り、今のところは一般的に知る人は少ない企業です。

しかし、企業価値は1兆円超え、ドローンハードウェアのシェアは世界で7割超えと、その独走ぶりは他の追随を許しません。

近い将来、ドローンがもっと身近なものになり、産業用等で活躍するようになれば、誰もが知る企業になるであろうDJIが何故ここまで他社を突き放し、独走状態で成長し続けられるのかを今回は見ていきたいと思います。

技術とスピードで他を圧倒

DJIは2006年に複数のプロペラを持つマルチコプターの姿勢制御を行う「フライトコントローラー」のエキスパートとして創業された、まだまだ若いベンチャー企業です。同社はよくアメリカの会社だと誤解されることがありますが、チャイニーズ・シリコンバレーと呼ばれる中国南部の深センに本社を構えています。

創業当初約20人だったスタッフは、今や従業員3000人規模にまで成長しており、日本にも東京と神戸にオフィスを構え、DJIの製品は世界100か国以上のさまざまな業界で利用されています。

急成長を可能にしている主な要因は以下の4点です。

①地の利

DJIが本社を置く人口約1300万人の「チャイニーズ・シリコンバレー」深センはここ十数年で急速に発展してきた街で、イメージとしては秋葉原を数倍規模にしたような街です。ここには近年世界的に高い評価を得ている香港科技大学があり、本場のシリコンバレーがスタンフォード大学やバークレー等の大学を中心としたネットワークで構築されているように、優秀な頭脳が集まる場所でもあります。DJIはそうした非常に恵まれた環境を活かすことができる場所に立地しています。

②技術への拘り

約3000人の従業員の内、技術スタッフは1500人と半数を占めており、技術開発に力を入れていることがわかります。実際に、看板商品であるPhantomシリーズが大ヒットしているのは、ドローンの頭脳の役割をする「フライトコントローラー」と、機体の動きに関係なくカメラを一定の傾きに維持する「ジンバル」の技術が世界最高だからです。現状、ドローンが空撮メインで使われていることを考えれば、ドローンは言い換えれば「空飛ぶカメラ」です。つまり、機体を安全に制御して飛行させるための「フライトコントローラー」と、カメラを安定させ滑らかな空撮を可能にする「ジンバル」の技術が世界最高ということは、現状で世界最高のドローンメーカーと言えます。

③クリエイティブ部門への拘り

DJIのプロモーション用ムービーやカタログはスタイリッシュで見る者の心を掴み購買意欲を刺激します。実はこのクオリティーの高いクリエイティブ部門も全て自社で行っており、これは「テクノロジー&アート」とういうポリシーと、製品のことを理解してこそのクリエイティブであるため、外注をすると逆にスピードが遅くなってしまうという考えに基づいています。技術一辺倒ではなく、心を掴むプロモーションにもスピードをもって力を入れるというバランス感覚も同社の強みと言えます。

④先見性

DJIが急成長するきっかけになったのがPhantomの大ヒットです。この製品は市場のニーズに見事にマッチしていました。アマゾンがドローンを使った配送サービスの計画を発表して以来一気に注目度が増したドローンですが、配送レベルの長距離を飛行するとなると、どこの国でも規制が厳しくなっており、実証実験を行うだけでもかなりの労力を使うため、その手の大掛かりなサービスというのは満足には実現されていません。

そのため、これまでドローンが利用されてきたシーンの殆どが空撮の分野でした。用途が空撮となると、飛行させるまでに時間を要し、重い大型のドローンは不便なため不必要です。そのため軽量で、ラジコンやメカに詳しいマニアでなくとも商品到着から1時間後には飛ばすことができ、機体が安定し、高画質の映像が撮れるPhantomは個人から法人まで様々な人々に支持され、瞬く間に世界中に広まっていきました。

そして世界7割のシェアを獲得し、DJIブランドを確立した同社は、最近本格的にBtoBのドローン市場に力を入れてきました。丁度各国のドローンに対するルールが定まりだし、本当にドローンがビジネスの世界で発展していくのかと様子を見ていた企業が徐々に動き出してきたタイミングで産業用ドローンの販売と企業向けのスクールを開始しています。

最後に

このようにDJIは、その経営戦略は抜かりなく、ドローンに対して希望は持っているけれども信じきれず二の足を踏んでいた世間を牽引するような格好で一気に業界ナンバーワンの地位に躍り出ました。

これまでの躍進は、ドローンだけに俯瞰で自社と市場を分析する冷静さ、勝機を逃さないスピードを持った実行力、消費者を納得させる技術力に支えられています。

ドローンはまだまだこれから我々の想像を遥かに超えて伸びていく可能性がある市場です。

上空をドローンが飛び交う時代が訪れた時に、DJIという会社がどのようなポジションにいるのか期待せざるを得ません。

 

 

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