これからの獣害対策はドローンが主軸?ドローンによる獣害対策サービスを徹底解説

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ドローンの価格低下や技術力向上によってドローンの人気が爆発的に増えてきています。なかでも農業分野では『人材不足をドローンで補える事』や『食料問題の解決のために活用できる』ためドローンの需要が高まっています。しかしドローンによる農業の発展とは裏腹に獣害被害は後をたたず、年々問題視されています。こういった問題に対して、獣害被害もドローンで解決しようとする動きが近年みられており、今回はドローンで獣害被害の食い止め事例について紹介します。

国内獣害被害の現状

都市部に人口が集中し地方農村部での人口減少に伴い、里山の衰退が起こり、国内の獣害被害発生が多くみられるようになりました。獣害被害の問題は複数の要因が重なって起こるため、解決することはおろか、原因を突き止めることすら厳しいとされています。令和元年に農林水産省が発表した報告によると鳥獣が原因の平成30年度農作物被害は、被害金額が約158億円、被害面積は約5万2千ha、被害量が約49万6千tと報じられています。前年度と比較すると被害金額や被害面積は4%ずつ減少したものの、被害量は4%増加しているため国内の鳥獣被害は未だ大きな問題として残っています。
<出典>農林水産省HP:https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/tyozyu/191016.html#:~:text=%E8%A2%AB%E5%AE%B3%E7%8A%B6%E6%B3%81%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81,%EF%BC%85%E5%A2%97%EF%BC%89%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

ドローンを活用した獣害対策サービス紹介

未だ有効な獣害対策が講じられないなか、ドローンを利用した獣害対策に挑戦する企業が多数登場してきました。そこで今回は2社に絞って会社情報や獣害対策の特徴を紹介します。

株式会社地域環境計画

株式会社地域環境計画が運営している鳥獣被害対策ドットコムは、在来野生生物やペットなどの外来生物の被害防除を専門としたサービスを提供しています。年間40万件以上のアクセスを獲得しており、行政や研究機関とも連携をしています。

様々なサービスがある中に『赤外線カメラを搭載したドローンでの獣害対策サービス』があります。

野生動物は見通しのいい場所を警戒し耕作地など身を隠せる場所を好みます。さらに夜行性動物は日中巣にこもるため人間の観察で野生動物の生息数などを把握することは容易ではありません。しかしドローンと赤外線カメラを組み合わせたこのようなサービスではその難点を解決してくれます。人間では見落とすような隠れた動物もドローンはしっかりと補足し獣害対策の貴重な情報を提供します。

株式会社地域環境計画HP:https://www.choujuhigai.com/fs/chiikan/c/drone

株式会社スカイシーカー

株式会社スカイシーカーは産業用ドローンの販売やドローンを活用した野生鳥獣調査・災害対策などのソリューション開発をしており、国土交通省航空局により認定された「無人航空機の講習を行う団体に定期的な監査等を行う管理団体」にも選ばれています。

法人向けレンタルドローンなども提供していますが、サービスの中に『ICTを活用した野生鳥獣による農作物被害対策ソリューション』があります

サービスの概要はドローンによる調査から得られたデータを元にCSV出力をし、有識者との考察までを行っています。データ解析では会社独自のAI自動解析システムを利用し獣種別の特定が行え、効果的な獣害対策を講じてくれます。また有識者との意見交換とドローンによる十分な解析情報は野生動物の細かな癖の特定に繋がり、獣害対策の成功確率を大幅にあげます

株式会社スカイシーカーHP:https://skyseeker.jp/investigation/

鳥獣被害でのドローンの可能性

鳥獣被害を専門とする事業やサービスも数多いことはドローンがそれほど有能であることを証明しているのではないでしょうか?しかしドローンの有能を示す物はそれだけではありません。獣害被害を研究する研究機関や専門家などもドローンの有能性は説いており、鳥獣被害の解決にドローンが有効だとする論文も多数発表されています。数ある中の三重大学の准教授が発表した論文を紹介します。

獣害対策におけるドローンの利用可能性

三重大学大学院生物資源学研究科 鬼頭孝治准教授
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsamfe/78/3/78_196/_pdf

 鬼頭孝治准教授 の論文の要点をまとめると以下の3つになります。

  • ドローンが有効とする大きな理由として現状課題になっている農地への進入路となるが柵で囲えない場所において,野生動物の侵入を検知することができる。
  • さらにドローンに光や音を発する装置をつけることでさらに対象動物は忌避すると思われる。
  • 野生の鹿とを対象に実験を行ったところ効果は見られたが動物が慣れてしまうと結果は変わってくると推測。

実際に野生の鹿に対して行った実験にて実験対象地域に出没した鹿4頭全てを忌避させたことがなによりもドローンの可能性を証明しています。野生動物が持つ習性である『慣れ』に関しては今後も考慮する必要があるものの、既存の獣害対策にかける労力や時間を考えるとドローンでの防除活動は効率よく行えるため採用する価値があると論文では説いています。

予想される動物とドローンの事故

ここまでドローンが獣害被害対策に有効な理由を紐解いてきましたが、可能性ばかりに目を向けてはいけません。獣害対策にドローンを用いることで起こるデメリットもあり、代表的なものに野生動物とドローンの事故が問題視されています。既に動物とドローンの事故は数多く確認されており、その中から有名になった2ケースを紹介します。

ドローンが鷹に襲われたケース

この動画はドローンで撮影中に野生の鷹に襲われてしまった貴重な動画になります(該当シーンは0:54秒~)こういった狂暴かつ生態系のトップに君臨する大型動物にとってドローンは餌や遊び道具になることがあります。特に獣害被害に悩まされる地域は地方の自然豊かな地域が多く、鷹といった大型動物が数多く生息する場所のため、こういったケースは容易に起こります。野生動物が傷付いたり、操縦不可能なドローンの落下など危険があり、未然防止の策が不可欠です。

チンパンジーがドローンを木の棒で攻撃したケース

この動画は動物園内で撮影された動画ですが、チンパンジーがドローンを木の棒で攻撃した貴重な動画になります。このように高度な知能を持つ霊長目はドローンに興味を示し攻撃をする可能性がありあります。日本でも霊長目のニホンザルが国内に広く生息しているため、ドローンの防除作業中にこのようなケースに当たる危険性はあります。事故の未然防止のためにもニホンザルの生息地では特別な配慮が必要になります。

まとめ

さて今回はドローンによる獣害被害対策に関して紐解いてきました。将来性高く発展の余地があるものの事故の懸念など課題も多くあります。ドローンの活用は獣害対策にとって大きな解決の糸口になると思われますが、安全面や倫理面も同時に考慮していく事でドローンを仲介にした、鳥獣と人間の最適なバランス関係が作られるのではないでしょうか?

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