人工衛星の技術をドローンに応用し、松くい虫被害状況を把握

信州大学ドローン
信州大学と、学内ベンチャーで発足した精密林業計測株式会社は、国産ドローンの開発・製造・販売を行う株式会社エンルートM’sと協力し、国内初となる、産業用ドローンを使用した「松くい虫被害対策」の実証実験を、9月25日に実施することを発表しました。実験は、松くい虫被害が問題となっている長野県伊那市で行われます。

実験概要

本実験は、長野県伊那市の山岳上空をドローンの自動航行で森林の空撮を行い、撮影した映像を解析することにより、松くい虫による被害状況をいち早く把握することが可能かを実証します。

各社の役割

 

  • 信州大学山岳科学研究所:松くい虫被害を区分する技術の現地説明
  • 精密林業計測株式会社:松くい虫被害を区分する技術開発
  • 株式会社エンルートM’s:ドローンの運用、ソリューションの提案

松くい虫被害

 

使用機材

実験で使用されるドローンは国内大手エンルート社製の、一般に普及しているドローンと比較して、撮影時間が約2倍の30~40分と長く、撮影範囲が20~50haと広いQC730を使用。特殊なジンバルを採用しており、ミラーレスカメラの他に多波長センサなども搭載可能です。
映像はsonyのα6000で通常の可視映像を撮影し、多波長センサRedEdgeを使用して※マルチスペクトラルの撮影を上空より行います。
※対象物からの反射または放射される電磁波をセンサーで受け、波長帯毎にデジタル化して映像する過程で,、複数の波長帯を観測した映像
エンルート

人工衛星からドローンへ

信州大学先鋭領域融合研究群山岳科学研究所の加藤正人教授は、国立開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)から「先進光学衛星センサの林業分野での有用性評価」を受託し、先進光学衛星の観測バンドを用いた、松くい虫被害の区分について有用性の評価を伊那市と連携して行っています。
今回実証実験を行う技術は、加藤教授が人工衛星で開発した被害木抽出技術と、株式会社エンルートM’s社の技術を連携することで実現することになりました。
分解データ先進光学衛星の地表の様子を識別できる能力(地上分解能力)は80cmですが、人工衛星に搭載する長波長センサを小型化することで専用ドローンに搭載することが可能となったため、地上分解能力約3cmで健全木と被害木(感染木、枯損木、枯死木)をより鮮明に区分できるようになっています。
また、ドローンであれば、いつでも撮影できる利便性と、より詳細に松くい虫の被害状況をつかむことができるため、精密林業計測とエンルートM’sは『本サービスの事業化を検討し、林業に新たな付加価値を与えるサービスとして提供してまいります。』としています。

実施日時・場所

  • 期日/時間:2017年9月25日(月) 9:00~10:30
  • 場所:長野県伊那市富県福地高烏地籍(高烏谷グラウンド)にて
  • 実証内容 :伊那市山岳上空の空撮、α6000による可視光、RedEdgeによるマルチスペクトラムによる撮影専用ディスプレイで飛行時の様子をリアルタイムで上映

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