レベル3.5飛行によるタブレット&処方薬配送ドローン実証実験

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

奈良市(市長:仲川 げん)、KDDIスマートドローン株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:博野 雅文、以下 KDDIスマートドローン)、株式会社コミュニティメディカル(本社:東京都港区、代表取締役:小田 弘)、株式会社NEXT DELIVERY(本社:山梨県小菅村、代表取締役:田路 圭輔、以下 NEXT DELIVERY)は、2024年2月26日から2月28日にかけて、奈良市において無人航空機レベル3.5飛行による処方薬配送及び災害時の医薬品配送に向けた薬局を起点としたドローン物流の実証実験を実施したことを発表しました。

奈良市の東部地域は、田原・柳生・大柳生・東里・狭川・月ヶ瀬・都祁の7地区から構成され、標高200m~600mに位置する大和高原の北部にあります。面積は奈良市全体の約57%を占めていますが、人口は約1万人と奈良市全体の約3%です。また、東部地域の65歳以上の人口は約4,700人で高齢化率は約45.7%と、奈良市全体と比較しても10ポイント以上高くなっています(2024年3月時点)。
そんな中、奈良市では昨年2月に月ヶ瀬・柳生においてドローンを使った荷物配送の実証実験を実施(注1)しており、今回は東部地域の課題の一つでもある地域医療において、高齢化などに伴い需要の増加が予想される医薬品の配送実証実験を行いました。

処方薬配送の実証実験

東部地域には5か所(柳生・田原・月ヶ瀬・都祁・興東)の診療所があり、診療所ごとに違いはあるものの、取扱い医薬品の種類や在庫状況の関係で1~2割の患者が院外処方となっています。一方、東部地域には調剤薬局がひだまり薬局田原店とひだまり薬局(都祁)の2店舗しかなく、院外処方では処方薬をひだまり薬局もしくは市街地の薬局まで取りに行かなければなりません。東部地域から市街地までは車で約30分、遠い場所では1時間以上もかかる上、路線バスは約2時間に1本程度と限られており、薬局までの交通手段が課題となっています。
また、今後、高齢化や免許返納などが進む中で、処方薬を取りに行くことが難しくなる住民が増えることが予想され、自宅などでの処方薬の受け取りが望まれます。
そこで、これらの地域課題の解決策の1つとして、ドローンを活用して服薬指導から処方薬の受け取りまでを在宅で行う実証実験が実施されました。

服薬指導用タブレットの配送
オンライン服薬指導用の通信機器をお持ちでない患者を想定し、まずはひだまり薬局田原店から患者宅へオンライン服薬指導を受けることができるタブレットをドローンで配送しました。
ひだまり薬局田原店から遠隔でオンライン服薬指導を行った後、ひだまり薬局田原店から患者宅へ処方薬をドローンで配送しました。

飛行ルート:ひだまり薬局田原店↔患者宅
飛行距離:片道約1.4㎞
配送物:処方薬
飛行時間:約4分

タブレットによりオンライン服薬指導を受ける様子タブレットによりオンライン服薬指導を受ける様子

処方薬を受け取る様子処方薬を受け取る様子

災害時を想定した医薬品配送の実証実験

奈良市では今年1月、災害時における迅速な医療救護活動の展開を図るべく、一般社団法人奈良市薬剤師会と「災害時の医療救護活動に関する協定」を締結しました。本協定は、地震や風水害などの災害が発生した際に、奈良市と奈良市薬剤師会が相互に協力をして、医療救護活動を実施するための必要事項を定めたもので、具体的には、災害時に薬局等から救護所または避難所へ、医薬品等の供給を行っていただくものです。
また、今年1月に発生した能登半島地震では、道路が寸断され陸送できない地域に医薬品等の物資を配送するなど災害対応にドローンが使用されています。特に、東部地域の山間部で、災害時は土砂崩れや倒木、道路の崩壊などで道路の寸断が想定されます。そこで、災害発生を想定し、薬局から東部出張所(二次避難所)へドローンによる医薬品の供給ルート確保の実証実験が実施されました。

災害から避難中に負傷された患者や、孤立集落化を想定し、ひだまり薬局田原店から東部出張所(二次避難所)へ医薬品(消毒液、絆創膏、湿布薬、鎮痛剤)をドローンで配送しました。
飛行ルートを開通したことで、今後、GPSの座標を利用して薬局を起点としたドローンによる医薬品の配送が可能になりました。

飛行ルート:ひだまり薬局田原店→東部出張所
飛行距離:片道約6.5㎞
配送物:医薬品(消毒液、絆創膏、湿布薬、鎮痛剤)
飛行時間:約15分

配送物の様子配送物の様子

オンラインで症状確認する様子

実証実験による効果

・オンライン服薬指導と組み合わせ、ドローンによる処方薬配送オペレーションを確認できた。
・ドローンによる災害時の医薬品配送オペレーションを確認できた。
・飛行ルート上の電波は途切れることなく、周辺環境への影響も無かったことから、安全運航が可能な処方薬、医薬品の配送ルートを開通できた。
・無人航空機レベル3.5飛行により、実装を見据えた省人化や効率化の実現を確認できた。(注4)

実証実験における各社の役割

奈良市:事業化検討・関係各所調査・フィールド提供等
KDDIスマートドローン:プロジェクト統括・機体提供・運航
株式会社コミュニティメディカル:調剤業務・服薬指導
NEXT DELIVERY:機体提供・運航

各社コメント

[奈良市長 仲川げん]
人口減少と働き手の確保が難しい中、その状況を突破する救世主としてドローンの技術を活用することが重要です。実用化を見据え、技術的に確立しており手応えを感じている一方、費用面において現段階ではサービスとして利用者の方に提供していくことは難しいと感じており、初期段階はモデル地区やエリアを絞ってサービス提供を行い、行政がバックアップしながら皆さまに使い慣れていただくことも一つだと思います。汎用性が高まることで費用面の問題も解決していくと思いますので、一気に全国に広がることを期待しています。
また、将来的には無人航空機レベル4飛行にて街中でのサービス展開も想定することができます。まずは中山間地域で最先端の技術を活用した実証実験を行い社会変化を生みだすと共に、奈良市の東部地域から日本全体を支え、より良くしていくための新しいチャレンジが生まれることを期待しています。

[株式会社コミュニティメディカル 第3グループ マネージャー 一般社団法人 奈良市薬剤師会 副会長 吉谷 淳至]
私どもが東部地域で薬局を経営して約20年が経ちます。以前は患者と家族が一緒に来て、薬を処方するというのが一般的な形でしたが、最近になって高齢の患者が1人で車に乗って薬局に来ることが多くなっています。東部地域の人口推移がこの20年で約4割減少している背景もあり働き手の確保が難しい一方で、高齢の一人暮らし、高齢の夫婦への配達需要は増しており、今後も増加していく予想をしています。配達需要を解決する策を考えていた矢先に、このドローンの実証実験の話をいただきました。今後発展していくのであれば、過疎地でも患者へ薬を配達でき、非常に助かると思いました。
また東部地域には近隣に住宅が少ない場所で居住されている方もいます。能登半島地震のような災害が起きて土砂崩れや倒木で道路が分断されてしまうと、負傷者が孤立してしまうという問題があります。東部地域において、災害が起きた時のための医薬品の配送ルートがあることは東部地域にとっては大事な事だと思います。
そういった反面、薬の販売は患者から直接相談を受けて、薬剤師が対面で直接販売するということが、薬機法に記載されています。ネット販売や、オンライン投薬など、対面販売ではないルートで簡単に薬が手に入るということは良いことですが、大量服用などの問題があります。そういった懸念を払拭するため、国から定められたガイドラインを遵守し、課題をクリアにしていって、地域課題を解消する活動が全国に広がっていく事を願っています。

写真向かって左より、 株式会社コミュニティメディカル 第3グループ マネージャーおよび、一般社団法人 奈良市薬剤師会 副会長 吉谷 淳至、 奈良市長 仲川 げん、 KDDIスマートドローン株式会社 ソリューションビジネス推進2部部長 森嶋 俊弘、 株式会社写真向かって左より、 株式会社コミュニティメディカル 第3グループ マネージャーおよび、一般社団法人 奈良市薬剤師会 副会長 吉谷 淳至、 奈良市長 仲川 げん、 KDDIスマートドローン株式会社 ソリューションビジネス推進2部部長 森嶋 俊弘、 株式会社

機体・運航管理システムについて

機体は株式会社エアロネクスト(以下エアロネクスト)が開発した日本発の物流専用ドローンAirTruck(注2)用い、レベル3.5飛行(無人地帯上空での目視外自律飛行)を行いました。また、運航はエアロネクストの子会社でドローン配送事業を主事業とするNEXT DELIVERYとKDDIスマートドローンが行い、機体の制御には、KDDIスマートドローンが開発したモバイル通信を用いて機体の遠隔制御・自律飛行を可能とするスマートドローンツールズ(注3)の運航管理システムを活用しています。

- 資 料 -

(注1)リリース資料「奈良市でドローンを使った荷物配送の実証実験を実施」

https://www.city.nara.lg.jp/uploaded/attachment/157166.pdf

(注2) 物流専用ドローン AirTruck
次世代ドローンのテクノロジースタートアップ、株式会社エアロネクストがACSLと共同開発した日本発の量産型物流専用ドローン。エアロネクスト独自の機体構造設計技術4D GRAVITY®(注5)により安定飛行を実現。荷物を機体の理想重心付近に最適配置し、荷物水平と上入れ下置きの機構で、物流に最適なユーザビリティ、一方向前進特化・長距離飛行に必要な空力特性を備えた物流用途に特化し開発した「より速く より遠く より安定した」物流専用機。日本では各地の実装地域や実証実験で飛行しトップクラスの飛行実績をもち、海外ではモンゴルで標高1300m、外気温-15℃という環境下の飛行実績を持つ(2023年11月)。可搬重量(ペイロード)最大5kg、最大飛行距離20km。

(注3)スマートドローンツールズ
KDDIスマートドローン株式会社が提供する、ドローンの遠隔自律飛行に必要な基本ツールをまとめた「4G LTEパッケージ」に、利用シーンに合ったオプションを組み合わせて利用できるサービス。「4G LTEパッケージ」は、全国どこからでもドローンの遠隔操作・映像のリアルタイム共有を可能とする「運航管理システム」や、撮影したデータを管理する「クラウド」、データ使い放題の「モバイル通信」、どのエリアでモバイル通信を用いた目視外飛行が可能か事前に確認できる「上空モバイル通信エリアマップ」などのツールをまとめて提供している。

(注4) オンライン服薬指導での処方薬配送ルートにおいて補助員1名、災害用の医薬品配送ルートにおいて補助員4名の省人。看板設置・撤去の作業削減。

(注5)機体構造設計技術4D GRAVITY®
飛行中の姿勢、状態、動作によらないモーターの回転数の均一化や機体の形状・構造に基づく揚力・抗力・機体重心のコントロールなどにより空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させるエアロネクストが開発した機体構造設計技術。エアロネクストは、この技術を特許化し4D GRAVITY®特許ポートフォリオとして管理している。4D GRAVITY®による基本性能の向上により産業用ドローンの新たな市場、用途での利活用の可能性も広がる。

*本記事に記載されている会社名および製品・サービス名は、各社の登録商標または商標です。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
  • LINEで送る

コメントを残す

*