
株式会社アイ・ロボティクス(本社:東京都渋谷区、代表取締役:安藤 嘉康)は、西日本旅客鉄道株式会社(金沢支社 敦賀保線区)と協力し、鉄道保守業務のドローン運用モデルの構築と実証を実施した。
この取り組みでは、「遠隔操作型ドローンポートの設置と運用」、「除草剤の空中散布に関する実地検証」、「動物忌避剤の活用可能性に関する環境調査」などを行い、ドローン技術の適用を多角的に検証。現場業務への自然な導入を目指した。
鉄道業界では、沿線保守業務の人材不足や作業の属人化、作業品質の標準化と安全性確保が課題となっている。従来、技術導入が現場運用と十分に結びつかないケースも見られたが、本プロジェクトでは「現場と共に設計し、現場で試す」というアプローチを採用し、単なる技術検証ではなく、実務に根差したデジタルトランスフォーメーションを重視した。

実証を通じて得られた主要な成果と検証ポイント
本プロジェクトでは、実運用に近い条件下での検証を通じて、導入後の具体的な運用像を構築。特に成果が顕著だったポイントを以下にまとめる。
■ 遠隔操作型ドローンポートによる省力化オペレーションの実現
実証現場にドローンポートを設置し、定時・定ルートでの自動離着陸と巡回飛行を行った。これにより、作業員が常駐せずとも点検・散布業務を遂行できる運用フローを確立し、省人化と作業標準化の効果を確認した。

■ 線路沿線における除草剤空中散布の実地検証
雑草繁茂区間において、中型農業用ドローンを活用し、除草剤の空中散布の実証を実施。飛行ルートの安定性や撒布範囲の均一性、薬剤の飛散抑制など、安全性と精度のバランスを評価し、より効果的な散布手法を検討した。

■ 動物忌避剤の空中散布に関する環境調査と導入検討
獣害対策としての忌避剤空中散布の有効性と実現性を調査。現地環境や法的要件の整理を行い、実運用に向けた課題と対応策を可視化した。

■ 作業体制と人員負荷の最適化
ドローン活用により、従来5人以上を要した散布作業を2人で対応可能に。気象条件や現場状況に柔軟に対応しながら、作業精度を維持する運用モデルを確立し、人的負担の軽減につながる成果を得た。

■ 安全運用と制度適合の両立
航空法や農薬取締法などに基づく運用設計を徹底し、事前申請・現地管理・安全標識設置を実施。実証期間中の事故ゼロを達成し、安全管理体制の有効性を確認した。

鉄道業界の持続的な発展に向けて
鉄道保守業務において、安全性と確実な作業が求められる一方、慢性的な人材不足や作業の属人化、作業品質の平準化が課題となっている。本プロジェクトは、単なる技術導入ではなく、現場と技術の橋渡しとなる共創型のアプローチを採用し、持続可能な保守業務の在り方を模索した。
特に、ドローンを省力化ツールとしてではなく、現場業務に自然に組み込む手段として位置づけ、作業計画や飛行申請、薬剤管理など、運用全体を視野に入れた取り組みを進めた。
アイ・ロボティクスは今後も、ドローン活用を通じて「人と技術が協働する持続可能な鉄道保守の実現」に向けて取り組みを続ける方針だ。

今後の展望
本プロジェクトの成果を踏まえ、アイ・ロボティクスとJR西日本 金沢支社 敦賀保線区は、技術・運用基盤の整備を継続して進める。また、鉄道事業者との連携を深め、地域の特性に応じた散布設計や制度整備の検討を行い、実装を見据えた協業体制を構築していく。
ドローンの活用は技術のみならず、現場の知見と運用設計との組み合わせが不可欠である。本プロジェクトの成果を活かし、より実用的な導入を進めるための協力が求められる。