ドローンに使用されるGPSについて

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現在のようにドローンが一般的になるかなり前、おもちゃのヘリコプターのラジコンを購入して、いざ飛ばしてみると、予想以上に飛行させるのが難しく、とくに初歩の初歩であるはずのホバリングの段階においても、あまりに難しく泣く泣く飛行を断念された方も多かったと記憶しております。ところが、ここ数年で爆発的に普及したDJIをはじめとするドローンメーカーの製品は、送信機のスティックから手を離せば、何もしなくとも自動的に空中で制止しホバリングを続けられるようになりました。これにより操縦技術のハードルが一気に下がり、誰でもちゃんとした機体を購入さえすれば気軽にドローンを飛行させられる様になり、一気にドローンが普及することに至っています。そのドローンの安定した飛行を支える技術の一つが、衛星から電波を受信することで自機の位置を正確に把握することを可能にするGPSです。

GPSシステムとは?

地球を周回するGPSの様子

今やスマホやカーナビ等、地図を使用する機器のほとんどに内蔵され日常生活に不可欠の存在となりつつあるGPSですが、元々は米国で軍事用に開発された物です。GPSシステムはGlobal Positioning System(全地球測位システム)を意味し、24個の衛星から発せられる電波のうち、地平線上で受信可能な衛星からの複数の電波の到達する時間差を利用して受信機の位置情報を割り出しています。

GPS衛星はおよそ2万キロの高さを秒速3.87kmの速度で飛行しており、およそ12時間で地球を一周します。GPSの受信機側では、4つ以上の衛星の信号を捉えることで位置情報を割り出します。

GPSシステムは米国以外でも運用されており、最近のDJIのドローンではロシアのGLONASSの位置情報も併用して使用されています。

DJI Mavic2 ProのGPSモジュール

GPSの運用上注意すべき点

通常利用するには大変便利なGPSですが、状況により正確な位置情報が取得できない状況に至る場合があります。代表的な例として①山や建物等で電波が遮られて正確な位置が把握できない場合と②ビルや地面の反射波によってGPSの位置情報が狂う場合です。

山や建物等の電波遮蔽により位置情報が把握できない場合

上記のように本来GPSシステムは地球外周を高速で移動する衛星の電波を4つ以上受信することで位置を割り出しています。

通常上空から地平線まで遮蔽物が無い状態で有れば、地上の何処にいても正確な位置を割り出すことができるのですが、山やビルの等で地平線付近からの電波が届かない場合、受信できるGPS衛星の数が限られるため、正確な位置情報が得られなくなります。また、屋内で飛行する際にも同様にGPS信号が得られない状況となります。

このような場合、DJI等のGPS位置情報に依存する機種では「必要なGPS衛星の受信数が得られない」ことを示す警告が画面に発せられます。またMavic Mini等の下位機種によっては上昇高度に制限がかかり、それ以上の高さで飛行できなくなる場合があります。

DJIの機種でもある程度プロユースを意識した機種(Inspire 2、Phantom 4、Mavic 2 Pro等)ではGPSに依存せずに飛行できるATTIモードで飛行可能ですが、同モードで飛行するにはある程度操縦に熟練している必要があり、いたずらな事故を防ぐためにもGPS衛星の電波が十分に確保できない不安定な環境の場合、時として「飛行をしない」判断も必要となります。

ビルや地面の反射波によってGPSの位置情報が狂う場合

電波の遮蔽以外にGPS情報を狂わせる原因としてあげられるのが、反射による影響です。一般的に電波はビル等の建物や地面で反射されます。本来GPSシステムは複数の衛星からの直接の電波を受信する時間差で位置情報を計算している関係から、それら反射した電波を受信してしまうと実際の位置とは異なる位置情報を算出してしまう場合があります。

私たちが日常で生活する中でも時として、ビル街等でスマートフォンの地図を確認しようとすると、20~30mほど現在地がズレてしまう様な状況に遭遇することが有ると思われます。これは上記の建物による遮蔽の場合もしくはこの反射波が影響していることが原因と考えられます。

GPSが使用できない環境下での対策

上記の様にGPSは位置情報を得るに非常に便利なシステムですが、時に正確な位置を把握できない状況に陥る場合があります。とはいえ、ドローンビジネスに従事しているとGPSが使用できない状況でも飛行を行わなければならない状況に至ることもしばしばあります。

DJIの機種でもプロユースで使用される上位機種ではGPSを切った状況で飛行できるモードを選択できるため、飛行技術が要求されますが柔軟な対応ができる様になっています。一般的にドローンスクール等に於いても、実技授業はこのGPSを切った状態(ATTIモード)での飛行訓練が主となります。この点巷では「ドローンスクール不要論」が語られることもありますが、安全性が担保された環境下で自主的にATTIモードでの飛行を練習することは、なかなか難しいこともあり、ドローンビジネスでの起業を検討される方にはしっかりとしたドローンスクールで実技を学ばれることをおすすめします。

ビジョンポジショニングセンサー

DJI Mavic2 Proのビジョンポジションニングセンサー

DJIの上位機種には上記GPSが使えない環境下でも位置情報を取得できるように、機体下面に画像センサーが備えられており、同センサーから得られる地面の画像から自機の位置を判断できる仕組みが備わっています。このため、ある程度GPSが使えない環境下に陥っても安定して飛行することが可能です。しかしながら、同センサーも地面の画像の形が変化する場合(海上、川や湖の上空等)効果を発揮できません、また夜間等の画像から地形を判断するに暗すぎる場合も同様に効果を期待することはできません。この点を理解をした上で飛行運用をする必要があります。

気圧センサー

もう一つ、一般的にDJI等のドローに搭載されているセンサーで気圧センサーがあります。これはドローンの飛行している高度を判断する物で、名前の通り気圧の変化を読み取ることで高度がどの程度変化しているかを判断します。上記で昔のトイラジコンのヘリコプターの飛行が難しかったことを述べましたが、その原因として一定高度の維持が人手で行うには非常に難しかったことが挙げられます。

これらGPS、ビジョンポジショニングセンサー、気圧センサー等の助けにより現在市販されているDJI等の高機能ドローンは非常に操縦がしやすくなっています。しかしながら、前述の通り、時にその便利な機能が使用できない状況に遭遇することが時としてあります。仕事として従事する中で遭遇することが多いのが、GPS電波を十分に受信できない環境に至る場合と、送信機と機体の間の電波が届かなくなる場合です。

GPS電波を受信できなくなる場合、通常はビジョンポジショニングセンサーが働くのですが、これに頼れない場合、GPSを使用しないATTIモードに切り替え、操縦者の技量で飛行させる必要があります。具体的な事例としては、川にかかる橋の下潜り込む場合、GPSの電波も途切れ、水面上のためビジョンポジショニングセンサーも効かなくなり、急に機体の動きが不安定になることがあります。

送信機と機体間の電波が途切れる場合は、非常に不安になり時としてパニックになりかねないのですが、この状況は比較的頻繁に起こるため、あらかじめ電波が不安定になっても安全に自動帰還(Return to Home)ができる様に同高度等の設定をしておく必要があります。

これら現在のドローンは非常に高機能になり、比較的優しく飛ばせるようになってきていますが、安全に飛行させるには、いざというときにトラブルに対処できるようATTIモードでのマニュアルで飛行訓練をする等、日頃からの十分な備えが必要です。

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