スマートロボティクスとACCESSが物流用ドローンと連携する地上配送ロボットの試作機を共同開発

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ロボティクスやICT等の先端技術を活用し様々な業界の自動化・省力化に取り組む株式会社スマートロボティクスとITソリューションを提供する株式会社ACCESSは、2021年6月30日(水)、ドローンポートから個人宅の玄関先までの配送を行う事ができる地上配送ロボット(UGV=Unmanned Ground Vehicle)の試作機を共同開発したことを発表しました。
スマートロボティクスとACCESSは、物流用ドローンの配送において課題とされている「ラストマイル配送」を解決し配送の無人化を推進するため、今回の試作機の開発を機に共同でUGVの研究開発を進め、物流用ドローンの社会実装におけるドローンポートから個人宅の玄関先までの配送課題を解決していく予定としています。

共同開発されたUGV

今回、共同開発されたUGV試作機の概要は以下の通りです。
・最大積載量(サイズ):高さ200mm × 幅300mm × 奥行き350mm、重量:5kg
・電源、搭載バッテリー容量:598Wh、公称電圧 25.2V
・真空パッドによる荷物の吸着機能を搭載
・UGVに搭載したカメラ映像を確認しながらの遠隔操作が可能

【UGVとは??】
運転手の乗車を伴わずに無人状態で走行できる車両の総称です。
遠隔操作によって動く方式のものと、操作を必要とせず自律的に動ける方式のものと両方があります。UGVは無人で走行できるという意味で「無人機」とも呼ばれ、ドローンも無人機として運用される航空機の一部となります。
かつては軍用車両として開発・運用されているものを指すことが多かったですが、現在では物流や農業用など、経済活動に用いられるものもUGVと呼ばれています。

アマゾンやアリババ、楽天など大手ECがこぞって開発を進めるドローン配送

ECのますますの普及に伴い、宅配便取扱個数は年々増加しており、早く確実に届ける方法の構築は経済発展に必要な重要課題の一つとなっています。また物流量増加に伴う交通渋滞問題はインフラの整備を急務の課題としました。
一方で物流量増加に加えドライバー数の減少と高齢化による人手不足は深刻さを増し、新たな運送方法の確立の要求に拍車をかけている状況にあります。

【ラストマイル配送とは??】
こうした課題解決に向けて、ドローンによる物流を確立するための様々な実証実験や法整備が進んでいるなかで、物流用ドローンの配送において課題とされているのが、一般的にドローンのポートを設置できる場所は空が開けた場所に制限される点です。設置可能な場所が制限されるため、ポートから配送先となる個人宅までは距離があることが多く、その間を配送する「ラストマイル配送」が必要となりますが、ECをはじめとした宅配需要の右肩上がりの増加、配送ドライバー不足などを要因となり、ドライバーによる配送の限界がきている状況にあります。
すでに2013年のアマゾンの宅配をめぐる一件(注)に代表されるようにECの運営する会社と配送を請け負う物流業との関係は社会問題となっています。

注:佐川急便は2013年、アマゾンとの大口取引によって低く抑えられた配送料が経営を圧迫、再三の値上げ交渉も決裂して取引を中止しました。佐川急便が抜けた穴を埋めることとなったヤマト運輸も次第に利益が圧迫されるようになり、運賃交渉が活発化しました。

【中国が進めるUGV研究】
こうしたラストマイル配送の課題に対し、日本をはじめ世界各国でラストマイル配送の無人化を図るため、UGVの研究開発を進められています。
海外では中国・アリババグループが2020年9月で自律走行が可能な配送ロボット「小蛮驢(シャオマンリュ)」を発表。中国大手の「JD.com(京東商城(ジンドンショウジョウ))」を運営する京東集団も早くから配送ロボットの開発に乗り出しており、2017年にはロボット開発を手掛けるGo Further AIと共同で無人配送ロボット「超影(チャオイン)」を発表しています。「超影」は高さ1.6mのやや大きめのボックスタイプで、2018年には配送ステーションなどで実用実証を開始しています。
北米・アマゾンはすでに「Amazon Scout(アマゾン・スカウト)」の実用実証を米国各地で展開しており、EC各社による取り組みは年々盛んになっています。

【日本のUGV研究は??】
日本のEC大手である楽天も2016年にドローン配送サービス「楽天ドローン」を開始するなど物流改善に取り組んでいます。2019年2月には京東集団と提携を交わし、楽天が国内で構築する無人配送ソリューションに京東のドローンと地上配送ロボットを導入することに合意したと発表、同年5月に千葉大学の構内、9月に神奈川県横須賀市の公園で京東の配送ロボットを活用した配送実証実験を行うなど、取り組みを積極的に進行しております。今年3月には、国内初となる、自動配送ロボットの公道走行によるスーパーの商品の配送実験を横須賀市にある西友馬堀店と共同で実施しました。
実験を経て、今後は遠隔監視によって複数の自動配送ロボットを随行員なしで自律走行させることを早い段階で実現することを目標に進めていくとしています。

「ラストワンマイル配送」の課題解決のための開発

スマートロボティクスは、2016年の設立以来、ロボティクスやICT等の先端技術を活用して、様々な業界の自動化や省力化の課題抽出から仕様検討、開発や運用に至るまで一貫して対応しています。これまで業務用ロボットを社会実装することで、様々な現場の課題を解決してきた経験をもとに、遠隔操作するテレワークロボットや自律走行できる搬送ロボットの開発を進めています。

ACCESSは、1984年の設立以来、独立系ソフトウェア企業として、世界中の通信、家電、自動車、放送、出版、エネルギーインフラ業界向けに、モバイルおよびネットワークソフトウェア技術を核とした先進的なITソリューションを提供。累計搭載実績15億台を超えるモバイルソフトウェアおよび350社以上の企業への採用実績を誇る、ネットワークソフトウェアにおける開発力・ノウハウを活かした、ドローンへのソフトウェア組み込みに関する豊富な経験を有しています。

両社は、互いの技術とノウハウを組み合わせることで、物流領域における産業用ドローンの「ラストワンマイル配送」の課題解決および新規市場開拓を実現することができ、地域経済に貢献ができると考えが一致し、今回の地上配送ロボット(UGV)の試作機開発に至ったとしています。

官民一体となり物流への活用に向けた取組を推進

ドローンによる配送は、離島や山間部等の過疎地域における荷物配送、都市部における荷物配送、災害発生時の活用、倉庫内の荷物配送や在庫管理等、物流への活用についても見込まれており、「早ければ3年以内にドローンを使った荷物配送を可能とすることを目指す」との総理指示(第2回未来投資に向けた官民対話(2015年11月5日))等を踏まえ、官民一体となり、物流への活用に向けた取組が推進されています。

国土交通省は、2016年・2017年度に物流用ドローンポートシステムを開発、2018年度には、山間部等の過疎地域等における物流の課題解決に向け、無人航空機を活用した荷物配送を検討するため、全国5地域(長野県白馬村、福島県南相馬市、福岡県福岡市、岡山県和気町、埼玉県秩父市)で検証実験を実施しています。実証実験の結果を受けて、翌2019年6月に「導入コストの低廉化を図った上で収益性を向上することにより、事業採算性を確保できる」と示しています。

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