【アメリカ】DJI、新型入門機を世界同時投入するも米国は販売対象外―FCC規制が直撃

【アメリカ】DJI、新型入門機を世界同時投入するも米国は販売対象外―FCC規制が直撃

中国ドローンメーカーのDJIが、入門者向け新機種「Lito X1」と「Lito 1」を世界市場に向けて正式発表した。両機は入門者向けのアクセシビリティ重視の設計が評価されており、国際メディアからも好意的な評価を得ている。また、DJI製品として初めて「Lito」のブランド名が与えられた機種でもある。しかし米国消費者はこれらの機体を入手できない。連邦通信委員会(FCC)が2025年12月に下した規制措置が障壁となっているためだ。

FCCの「カバードリスト」指定が事実上の輸入禁止に

2025年12月、FCCは安全ネットワーク法(Secure Networks Act)と関連法に基づき、DJI製品を「カバードリスト(対象機器リスト)」に追加した。DJIはその直後に連邦第9巡回控訴裁判所に審査を申し立て、FCCへの再考も求めている。

DJIが2026年4月15日に提出した裁判所書類によると、このFCC措置は「すべての新製品の米国内でのマーケティングおよび輸入を禁止した」とDJI側は主張しており、指定当日から即日効力を持つと述べている。2026年中に米国市場での販売機会喪失により15億ドル超の損失が生じると試算しており、その深刻な影響が改めて数字で浮き彫りになった。

「既存製品は販売可能」だが新機種は蚊帳の外

現時点では、2025年12月の規制以前に機器認証を取得した既存製品(一部を除く)は米国での販売が継続されている。ところが既に認証が取り消された機種もあり、「旧来製品は買えるが新機種は届かない」という二重構造が生まれている。

今回発表されたLitoシリーズが典型例だ。PetaPixelは「米国外のビギナーには最適」と評価し、EngadgetとThe Vergeも相次いでポジティブな評価を掲載した。それでも米国での購入手段はない。

影響はドローンにとどまらない。PC Magは「DJIの禁止が現実になった」と題した記事の中で、人気のハンドヘルドカメラ「Osmo Pocket 4」も米国で入手できないことを指摘。映像制作やコンテンツクリエイター向けツールにまで規制の波が及んでいる。

公安・インフラ点検への影響も懸念

DJIは同裁判書類の中で、警察・消防・電力・ガスなどの公共インフラ機関が広くDJI製品を業務に活用していることに言及している。既存機材は継続使用できるものの、新機種への更新ができないため、機能向上や安全性向上が遅れるリスクが生じる。現場では長期的にデバイスが陳腐化していく懸念が高まりつつある。

法廷と規制当局の両面で争われる攻防

DJIは第9巡回控訴裁判所での司法審査を求めながら、FCCへの再考申立ても並行して進めている。一方、米国防総省はすでに規制撤回に反対する書面を提出済みだ(Pentagon Filing Opposes DJI Petition, Citing National Security Risks and Classified Information)。

この問題の帰趨は、米国内のドローン市場の構造そのものを左右する。DJI製品に依存してきた個人ユーザー・商業オペレーター・公共機関にとって、代替機種の選定や調達コストの増大といった現実的な課題が迫ってきている。

日本市場への示唆

日本においてDJIは依然として民間ドローン市場のシェアの大部分を占めており、規制動向は無縁ではない。日本独自の安全保障・サプライチェーン政策の観点から、今後の政府調達や公共機関利用に何らかの見直し議論が起きることも想定される。今後のFCC・裁判の動向に加え、日本側の規制当局の対応も注目すべきポイントだ。Autel RoboticsやSkydio(ともに米国系)など代替機種も存在するが、コスト・機能のバランスでDJIに匹敵する製品は現時点では限られており、代替調達には相応のコスト増と運用変更が伴う可能性が高い。

背景:DJIを取り巻く米中貿易摩擦の文脈

DJIのFCCカバードリスト入りは、米中間の技術・貿易摩擦の文脈で捉える必要がある。2021年に国防総省がDJIを「中国軍に関連する企業リスト」に加えて以来、米国内での規制圧力は段階的に強まってきた。2025年末のFCC指定はその集大成ともいえる措置であり、単なるドローン規制を超えて、通信機器・映像機器全般に広がる包括的な輸入制限に発展している。

DJIはこれら一連の措置に対し「安全保障を口実にした競争排除」と主張しており、法廷での争いを通じて覆しを目指している。ただし、過去の同種事案(HuaweiやZTEの規制)をみると、一度リスト入りした企業の制限が緩和されるケースは極めてまれであり、DJIが直面するハードルは高い。

出典:New DJI Drones Launch Globally, But Not in the U.S. – DRONELIFE(2026年4月23日)

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画像:dronelife.com

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